紆余曲折の「深層」とは――。パ・リーグ3連覇を達成したソフトバンクの守護神・杉山一樹投手(28)が本紙に独占手記を寄せた。昨季セーブ王に輝いた右腕は、不振に陥った4月にベンチを殴打して左手を骨折。感情を制御できなかった過ちを悔い改め、人知れず抱えた葛藤を明かした。一度は快諾したWBC出場を辞退するに至った経緯についても言及。「小久保監督を日本一にする」という誓いを胸に、歓喜の瞬間をマウンドで迎えた。
【V独占手記】戦いはまだ道半ばですが、リーグ3連覇という結果に安堵しています。昨秋の日本シリーズ終了後、小久保監督から「9回のポジションは競争。勝ち取らなければいけないポジション」と伝えられました。去年、僕は最多セーブ投手賞のタイトルを獲得しましたが、あくまで代役守護神。起用法を巡るオスナの契約問題については詳しく知りませんでしたが、彼もまた戻ってくるシーズン。それは当然だと思いました。ただ、監督からそう伝えられても、自分の中で〝燃え上がるもの〟がなぜか湧きませんでした。そこにすごく戸惑いました。昨シーズンの僕は、自分の力をすべて出し切って、燃え尽きたような感覚がありました。その状態から抜け出すことは思った以上に難しく、いかにモチベーションを上げていくか、本当に苦労しました。
明確な目標設定が浮かばないまま迎えた春季キャンプの2月、WBCを控えた侍ジャパンの井端監督から追加招集のオファーを直接いただきました。WBC出場に意欲があった僕は、すぐに「行きます」と返答。翌日に球団のメディカルチェックを受けることになりました。結果は右ヒジの不安を完全にクリアできず辞退。井端監督には今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。不安を抱えたまま参加すれば、代表にもチームにも迷惑がかかる。最終的に自分で申し入れた辞退でした。
シーズン開幕が迫る中、僕はまだモチベーションの悩みを抱え続けていました。この状況をどうにかしなければいけない。そんな焦りもある中で、僕はとことん「結果にこだわる」しかないと思いました。9回を圧倒的な投球で抑える。ただ三者凡退で封じるだけでは納得できない。いかに失点のリスクが少ない抑え方ができるか。とりわけ三振、防御率にこだわろうと思いました。
そうして迎えたシーズン序盤、パフォーマンスが上がらないばかりか、セーブ機会に失敗するなどチームに迷惑をかける始末。ふがいない投球が続く中でフラストレーションをため込み、4月11日の日本ハム戦(エスコン)でベンチを殴打して左手を骨折する事態を招いてしまいました。昨年もチームメートのミスをカバーできなかった際に、自分が情けなくて同じような行動を取ってしまい、小久保監督から注意を受けていました。チームスポーツの中で、本当に幼稚な振る舞い。チームよりも「個」が勝ってしまっては、信頼が失われるのは当然です。重要なポジションゆえに、他者への影響も大きい。本当にチームに迷惑をかけてしまいました。
僕は、小久保監督に使ってもらって今がある選手です。中継ぎに本格転向した2024年に50試合に登板して初めて一軍に定着。去年は代役ですが、自分から「守護神をやらせてください」と直訴して、使い続けてもらいました。今年もこれだけのことがあったにもかかわらず、クローザーで投げさせてもらっている。今、僕の中にあるのは「小久保監督を日本一にする」というモチベーションです。
8月に練習中のアクシデントで右足を負傷しましたが、戦列を離れる選択肢はありませんでした。1試合でも1イニングでもチームの勝利に貢献できることに喜びを感じています。自分にできることは、失敗から学び、たくましくなった姿を見せ続けること。まずは2年連続の日本一に向けて全力を尽くします。
☆杉山一樹(すぎやま・かずき)1997年12月7日、静岡県静岡市生まれ。28歳。駿河総合高から三菱重工広島に進み、2018年ドラフト2位でソフトバンクに入団。1年目から故障に泣かされ、5年目には一軍登板なしに終わったが、中継ぎに本格転向した6年目の24年にチームトップタイの50試合に登板。25年は6月中旬からクローザーに定着してセーブ王のタイトルを獲得した。今季も守護神として君臨し、ここまでリーグトップタイのセーブ数をマーク。9月17日時点で53試合に登板して1勝2敗、33セーブ、防御率3・00、奪三振率13・76。身長192センチ、体重106キロ。右投げ右打ち。













