「トラウマ」ならぬ〝虎ウマ〟が、虎将の脳裏をよぎっているのか。阪神は19日の広島戦(甲子園)に1―5で敗れ、連勝は「2」でストップ。勝率で首位こそ守ったものの、2位・巨人にはついにゲーム差なしまで迫られた。9月3日時点では5ゲーム差。それが半月余りで消えた。2008年の「メークレジェンド」を身をもって知る藤川球児監督(46)の言動や采配からは、並々ならぬ危機感も透けて見える。
勝負どころの9月にまさかの7連敗を喫し、猛虎軍はGの猛追を許した。この日は先に試合を終えた巨人が中日に大勝し、0・5ゲーム差に迫られた状態で負けられない一戦を迎えたものの、勝負どころで守備のほころびが露呈。1―1の4回にはドラ1ルーキー・立石の失策が勝ち越し点につながり、6回にも遊撃・熊谷の失策から追加点を献上した。
試合後、藤川監督は立石のミスについて「その辺りはやめておきましょう」とピシャリ。「今はとにかく目の前のゲーム、勝つことに集中しなければいけないし。明日もしっかりチームをね、まとめて戦うと。そこに尽きますね。以上になります」と言い残し、会見場を後にした。
宿敵に背後まで迫られ、指揮官の采配にも焦りが見え隠れする。7連敗を止めた17日の広島戦では7―2と5点をリードした9回に守護神・工藤を投入。この日も5回4安打2失点(自責点1)と粘っていた村上に対し、5回一死三塁の好機で迷わず代打・高寺を送ったが、空振り三振。勝負手は実らなかった。
藤川監督には、忘れようにも忘れられない18年前の記憶がある。2008年、岡田彰布監督率いる阪神は最大13ゲーム差をつけながら巨人に大逆転を許し「メークレジェンド」を許した。当時、絶対的守護神だった藤川監督も独走から一転、宿敵に追い詰められる怖さを痛感した。
しかも、悪夢はレギュラーシーズンだけで終わらない。同年10月20日の中日とのCS第1ステージ第3戦(京セラ)。現役だった藤川監督は0―0の9回に登板し、二死三塁からタイロン・ウッズに150キロの直球を左中間席へ運ばれて決勝2ランを被弾。チームも0―2で敗れ、そのままシーズン終了となり、藤川監督自身が第1次・岡田阪神で最後の敗戦投手となった。
それだけに、18年前の記憶が今季の采配に影を落としていたとしても不思議ではない。何としても逃げ切りたい――。その強い思いが、必要以上に前のめりにさせているようにも映る。
チーム周辺からも「まさかここまで連敗が続くとは思わなかった。5ゲーム差があったのに、一気に詰められてしまった。チーム内もいつも以上にピリピリしているし、こんな展開になるとは」との声が漏れているのが現状だ。さらに「このままいけば10月1日の甲子園での直接対決までもつれ込むだろう。そこまでに何とかしておきたいところだが…」と表情を曇らせる関係者もいる。
18年前は選手として、今度は指揮官として巨人の猛追を受ける藤川監督。〝虎ウマ〟を克服するのか、それとも再び屈するのか。いずれにせよ、あの悪夢を乗り越えない限り、この逆境からの「V」への道は開けない。













