勝者と敗者の差は、獲得した選手の名前ではなく、支払った未来の〝値段〟にくっきり表れた――。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は5日(日本時間同日)、3日(同4日)に迎えた今夏のトレード期限を総括。ナショナルズなどでGMを務めたジム・ボウデン氏が、市場を動かした取引を独自に格付けした。
文句なしの「ベストトレード」に選ばれたのはドジャースだ。タイガースから2年連続でサイ・ヤング賞に輝いたタリク・スクバル投手(29)を獲得し、ザイヒール・ホープ外野手(21)ら有望株3人を放出した。最大のポイントは、史上最高の投手を期限2日前に確保しながら、タイガース側が求め得た4人目の有望株まで差し出さずにまとめたこと。もともと3連覇の最有力候補だった王者が、短期決戦で初戦を託せる絶対的な存在まで加え、戦力の天井を一段と押し上げた。一方でボウデン氏は、将来の主軸候補ホープらを得たタイガースにも高評価を与え「双方が勝者になり得る取引」と見た。
最も巧妙だったのはブルージェイズだ。今季限りで契約が切れるケビン・ガウスマン投手(35)をカブスへ放出した翌日、エンゼルスから2028年まで保有可能なホセ・ソリアーノ投手(27)を獲得。さらに外野手をアストロズへ送り、スペンサー・アリゲッティ投手(26)も加えた。目先の戦力を売って将来資産を回収しながら、先発陣の穴を若く契約年数の残る即戦力で埋める離れ業だ。完全な解体へ踏み切らず、今季の可能性も捨て切らない設計で、ボウデン氏が「針に糸を通す最高の仕事」と評したのもうなずける。
対照的に「最悪の取引」と断じられたのがエンゼルスだ。ローガン・オホッピー捕手(26)とチェイス・シルセス投手(26)をレンジャーズへ送り、アンヘル・アレドンド内野手(19)だけを獲得。大半の球団がアレドンドを有望株の当落線上と評価していたとされ、長く保有できる2選手をまとめて手放した対価としては物足りないとの見立てだ。買い手に即戦力を2枚渡しながら、自軍の再建を加速させるだけの見返りを得たとは言い難い。
ドジャースは「現在」を盤石にし、ブルージェイズは「現在と未来」を両立させ、エンゼルスは資産価値を目減りさせた。派手な補強名より、誰をどれだけの条件で動かしたか。期限市場の本当の勝敗は、そこに刻まれている。












