疑似餌に食いつき、本物の大魚を逃した――。タイガースが今夏最大の切り札を手放した交渉は、ドジャースにまんまと「ダマされた」取引だったのか。ドジャースは1日(日本時間2日)、タイガースから今季終了後にFAとなるタリク・スクバル投手(29)を獲得することで合意し、2日(同3日)に正式発表した。見返りはザイヒル・ホープ外野手(21)、リバー・ライアン投手(27)、ブレイディ・スミス投手(21)の有望株3人だった。

 確かにホープとライアンはMLB公式の有望株トップ100に入る。ただ、2年連続でア・リーグのサイ・ヤング賞を獲得した「球界最高の投手」を差し出した対価としては物足りない。実際に米スポーツ専門局「ESPN」のブラッドフォード・ドゥーリトル記者もドジャースを「A」、タイガースを「D」と採点している。

 問題はタイミングだ。今季のトレード期限は3日午後6時(同4日午前7時)。交渉成立時点では約40時間も残り、ブルワーズをはじめ、レイズやカブスも獲得レースに加わっていた。売り手のタイガースには複数球団を競わせ、条件をつり上げる時間も材料もそろっていた。

ジャスティン・ロブレスキ(ロイター)
ジャスティン・ロブレスキ(ロイター)

 米メディア「ファンサイデッド」傘下のタイガース専門サイト「モーターシティ・ベンガルズ」は6日(同7日)、球団編成トップのスコット・ハリス氏が「契約をまとめた」ことと「最高の契約をまとめた」ことは別物だと痛烈に指摘した。実際、ドジャースには今季オールスターに選ばれ、防御率3点未満のジャスティン・ロブレスキ投手(26)がいた。故障歴があり、3Aで防御率4・46のライアンではなく、即戦力左腕を要求する余地はあったという。

 ブルワーズからも通算防御率2・50未満のローガン・ヘンダーソン投手(24)を軸にした条件、レイズからはブロディ・ホプキンス投手(24)らを中心とする案を引き出せた可能性があった。同サイトは、タイガースが「正しい池で釣りをしていながら、早々に引き揚げたため、まだ潜んでいた大魚を逃した」と表現した。

 スクバルの放出自体は、FAで無償流出する危険を避けるための合理的判断だった。だが、期限直前まで粘ってドジャースに譲歩を迫るどころか、提示された「疑似餌」へ先に食いついた印象は拭えない。獲得した3人が将来開花すれば評価は覆る。それでも現時点では、百戦錬磨のドジャースがタイガースの焦りを見抜き、最も欲しかった大魚だけを巧みにさらっていった取引に映る。