【武藤敬司の軌跡(最終回)】2022年6月、俺は引退を発表した。「ゴールのないマラソン」と呼んだ戦いに終止符を打つことにしたんだ。

ムタ(中)はラストマッチでスティング(右)、アリンと共闘(23年1月22日)
ムタ(中)はラストマッチでスティング(右)、アリンと共闘(23年1月22日)

 最後の試合は23年2月21日に東京ドームで行うことが決まって、22年9月に発表した。最初は「ちょっとデカすぎるかな」とか思ったけど、レスラーたるもの、何事も派手な方がいいじゃん。そういう商売だからさ。なぜこの日か? その日しか空いてなかったからだよ。だから「太ももが痛い」とか言って、延期するわけにもいかねえんだよ(苦笑い)。

 で、そこに向けて「武藤敬司ファイナルカウントダウンシリーズ」を開催してもらってね。初戦は7月の清宮海斗戦。成長? まだまだだけど、シャイニングウィザードもやっているし。今回の東京ドームでオカダ・カズチカに突っかかってるのは一つの目玉になってるからな。注目されるレスラーになったのはたいしたもんだよ。

 9月にグレート・ムタが新日本のグレート―O―カーンとやってね。あいつは面白いよ。体もデカいし。第三者として見た場合、昔のレスラーの雰囲気を持ってるじゃん。“メシをいっぱい食う”みたいなさ。にもかかわらずSNSとか、現代っ子の緻密な感覚も持っているんだよ。

 さらに23年元日にはムタVS中邑真輔だ。真輔が言った通り「奇跡」なんだよ。実は引退試合のアイデアの中で名前が出てWWEにチャレンジしたらダメだった。でも、その後(会長の)ビンス・マクマホンがいなくなったり(1月に復帰)いろんなタイミングが重なって「元日なら…」って実現してね。真輔もやりたいと主張をしてくれたと思うし、あの試合はムタの新たな作品だよ。思い出の1ページが埋まったなっていう感覚だ。

 そしてムタは一足先にリングを去った。1月22日、AEWのスティング、ダービー・アリンと組んで白使、丸藤正道、AKIRAと対戦した。この連載を読んでくれた人はわかると思うけど、ムタの最後にはやっぱりスティングがいないと。最後にムタの希望がかなってよかったよ。ただ、この試合で両脚のハムストリング(太もも)を痛めちまって。その影響がいまだにあるんだよ。

 さあ、残るは引退試合のみだ。相手は新日本の内藤哲也。理由? ぶっちゃけ東京ドームという器を考えてリサーチしたところ内藤が一番集客力があったのもあるよ。それに内藤って97年6月5日の日本武道館での橋本真也とのIWGPヘビー級王座戦を見てプロレスラーになると決心したんだって。それで集客力のあるレスラーになってくれたんだから良かったなっていうのはあるじゃん。

武藤がラストマッチに臨む
武藤がラストマッチに臨む

 そういう意味で点から線につなぐのがプロレスだとすると「武藤VS内藤」戦を見たちびっ子や若いヤツらが、プロレスラーを目指す図式が描けたら業界のためになるかなと思ったりするよ。だけど、いかんせん太ももがな…。 (終わり)

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