アイスダンスに転向・高橋大輔 2つの偏見を打ち破る

2019年10月01日 16時30分

高橋は村元(左)と息の合うところを見せつけた

 氷上の社交ダンス界に革命を起こす。フィギュアスケートのアイスダンスに転向した2010年バンクーバー五輪男子シングル銅メダルの高橋大輔(33=関大KFSC)が30日、新カップルを組む平昌五輪アイスダンス代表の村元哉中(26=木下グループ)とツーショット会見を行った。2人が目指すのは22年北京五輪だが、もっと大きな野望もある。長らく不遇の時代を歩んできた日本のアイスダンス界に存在する、2つの「偏見」を打ち破ることだ。

 新カップルは「大ちゃん」「かなちゃん」と呼び合い、時折、目を合わせてにっこり笑う。7歳差の距離感は全くなく、敬語の「壁」もない。

 村元の猛アタックによって実現した。2014年ソチ五輪を最後に引退し、昨季から現役に復帰した銅メダリストに対し「アイスダンスをやらない?」と村元が持ち掛けたのは今年1月。「僕なんかでいいの?」と高橋は戸惑ったが、村元は「大ちゃんの音楽のとらえ方、表現の仕方はダンスに生きる」と自信満々。7月に新潟のリンクで初めて一緒に滑ると、村元は「今までにない感覚」と衝撃を受けた。滑り終えた高橋から「楽しかった」という言葉を聞き、自信は確信に変わった。

 高橋は今年いっぱいでシングルを卒業。来年1月から米フロリダを拠点に、本格的にアイスダンスに打ち込む。目指す舞台は北京五輪だが、2人には「日本のアイスダンスの発展」という究極の野望がある。会見の最後に村元はこんな思いを訴えた。「ジャンプが跳べないからダンスに逃げたって見る人もいる。そうじゃない、逃げているわけじゃないと伝えたい」

 確かにアイスダンスは古くから「シングルより下」と見られがちだった。国際競技でも花形はシングル。だからこそ世界選手権優勝の実績を誇るシングルの成功者、高橋がダンスに転向したのは大きな風穴をあけるきっかけになるに違いない。

 もう一つ、アイスダンスが不遇の時代を歩むことになった裏には、“偏見”もあったという。元国際審判員でフィギュア草創期を知る杉田秀男氏(84)は「海外と違って日本はカップル競技をやる選手の親御さんがOKをしなかった。特に女性の選手の親御さんは先々のことを気にする。もしも…という男女関係の心配です」と話す。

 アイスダンスはご存じの通り、お互いの体を極端に密着させる。実際、カップルを組んだ後に恋愛感情が湧き、結婚したケースも少なくない。それを危惧し、有望なペアが誕生しかけても親の反対で潰されることが多かったという。

 ただ、時代は変わった。杉田氏は「今は周りの理解がだいぶ変わってきた。小さい子同
士で組ませても異性関係を気にする親は減ってきた。それに大輔と村元選手が活躍すれば、競技としてのアイスダンスの魅力が伝わると思います」と語る。

 あらゆる可能性を秘める新カップル。偏見を打破するとともに、人々の想像を超えるイリュージョンを見せられるか。