無双状態だ。阪神・佐藤輝明内野手(27)が3日のヤクルト戦(神宮)で3戦連発となる33号ソロ、34号2ランを含む4打数3安打4打点と大暴れ。かつて9月に地獄を味わった男は、今や押しも押されぬ「ミスター・セプテンバー」として自身初となる打撃3冠獲得を射程に入れている。早ければ今オフのMLB移籍を熱望している背番号8にとって、シーズン終盤に見せるこの強さは海の向こうを見据えた強力なセールスポイントとなりそうだ。

 もう誰にも止められない。初回一死一、二塁の第1打席で先制の適時打を右前に運ぶと、3回二死無走者の第2打席では右中間席中段への特大弾。5回一死一塁の第3打席では逆方向の左中間席へ2打席連続となるアーチをたたき込んだ。

 得点圏では勝負強く適時打をマークし、長距離弾を左右のスタンドへ広角に打ち分ける――。もはや手のつけようがなくなってきた感すらある背番号8は、試合後「自分のスイング、いいバッティングができている」と手短なコメントに充実感を漂わせる。チームは7―4でヤクルトに競り勝ち、優勝マジックは18まで減った。

 ルーキーイヤーの佐藤は前半戦のセンセーショナルな活躍と、後半戦のスタミナ切れがあまりにも鮮明だった。開幕から豪快なアーチを量産する一方、夏場を過ぎると急失速。特に9月には25打数無安打という深刻な不振に陥った。技術面で相手球団から徹底的に研究された影響はもちろんあったが、初めて経験するプロ野球の長丁場で〝ガス欠〟を起こした側面も否定できない。

 あれから5年。佐藤のガソリンタンクは明らかに大きくなっている。2023年以降は3年連続で9月のOPSが0・900をオーバー。23~25年の9、10月に限れば計20本塁打、64打点をたたき出し、OPSは約1・000に達する。疲労がピークとなるはずのシーズン最終盤で失速するどころか、むしろアクセルを踏み込めるようになった。

 この成長は佐藤が熱望する米球界挑戦を考えても大きな意味を持つ。MLBはレギュラーシーズンだけで162試合。ポストシーズンを勝ち上がればさらに長い戦いが待ち、広大な米大陸をまたぐ長距離移動も繰り返される。世界最高峰の投手に対抗する技術だけでなく、それを秋まで維持する強じんな肉体とスタミナも不可欠な世界だ。

 もちろん日本の9月に強いことが、そのままメジャーでの成功を保証するわけではない。それでも1年目には143試合の長丁場で終盤に息切れした男が、今では最も疲労が蓄積する時期を〝稼ぎ時〟に変えている。その事実はこの5年間における佐藤の進化が、筋力や技術の引き出しの増加だけではないことを物語る。

 かつて秋を前に空っぽになったガソリンタンクは、今や162試合+ポストシーズンの長丁場にも挑めるほど大きくなった。虎の9月男の爆発は、夢に描く次なるステージへ向けた頼もしい予行演習でもある。