〝愚直な二刀流〟が自らを追い込みかねない。

 ドジャース・大谷翔平投手(32)は左ヒザと右上腕二頭筋に不安を抱えながら打者として出場を継続。責任感の強さゆえに止まれない姿勢が、10月だけでなく選手生命まで削りかねない「ロード・トゥ・ルイン(破滅への道)」につながる危険性を米球界やメディアも警戒し始めている。

 信頼と放任は、似て非なるものだ。米全国紙「USAトゥデー」は8月31日(日本時間9月1日)、大谷の投手復帰について「依然として不透明」と報じた。左ヒザの炎症と右上腕二頭筋の不調を抱え、7月3日(同4日)を最後にメジャーのマウンドから遠ざかったまま。8月28日(同29日)にデトロイトで約20球のブルペン投球を行ったものの、次回登板のメドは立っていない。その一方で打者としては出場を続ける見通しだ。

 ここで問題なのは「投げられるか」だけではない。むしろ「なぜそこまで出続けるのか」だ。

 大谷は8月31日時点で127試合に出場し、打率2割8分、30本塁打、80打点。直近は明らかに失速している。ロバーツ監督(54)は8月29日(同30日)に「100%ではない」と明言し「ほかの投手が同じ状態なら投げさせない」とまで語った。それでも打撃を休ませる計画は現時点でないという。投手として送り出せないほど体に不安がある選手を、打者なら出し続けていいのかという疑問は残る。

 その根底には大谷の「独特な性格」もある。MLB公式サイトは6月、「ほとんどの偉大な選手と同じように、大谷は毎日先発したがる」と指摘。さらに「ロバーツ監督が先回りして休養日を設ける必要がある」とも続け、問題提起していた。実際に同監督は7月にも「翔平は可能な限り出場したがっている」と証言している。

 米スポーツ専門局「ESPN」の「SportsCenter」でも、元MLB選手で解説者のエドゥアルド・ペレス氏やデビッド・ロス氏が夏場に入った時点から、首根っこをつかんででも大谷を休ませるべきだとの趣旨を再三指摘してきた。責任感が強いからこそ自分では止まらない。ならば周囲が止めなければ、その長所は諸刃の剣となる。

 しかも球団側は以前から、その危険性を認識していた。ロバーツ監督は5月の時点で早々に選手が真夏に疲労困憊の域まで達すると回復は難しいとして、「レッドライン」に到達させない重要性を説いている。今になって「本人が出たがっている」ことを優先するなら、管理する側の責任まで問われかねないだろう。

 仮にここから大谷が本塁打を連発しても、危険と背中合わせの状況は変わらず同じだ。一時的な復調は喜べても、ヒザと腕の不安が消失する証明にはならない。「打てるから大丈夫」と走らせ続ければ、危険を覆い隠すだけになりかねない。

 ドジャースは8月31日時点、82勝55敗でナ・リーグ西地区首位。2位パドレスに9・5ゲーム差をつけ、ポストシーズン進出へ圧倒的優位に立つ。今こそ必要なのは目先の1打席ではなく、10月に万全の大谷を残すことに他ならない。

 責任感の暴走を美談にしてはいけない。本人にブレーキを任せたまま走らせ続ければ、その先は「ロード・トゥ・ルイン」になりかねない。大谷を守ることは、ドジャース自身を守ることでもある。