球団は「売らない」。だが、その〝帝国〟を築いた足場には今、かつてない視線が注がれている。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は1日(現地時間)、ドジャースのオーナー、マーク・ウォルター氏(66)が2012年に球団を手にしてから、MLB屈指の常勝軍団へ押し上げた軌跡を改めて詳報した。

 発端はウォルター氏の事業を巡る連邦捜査だ。FBIが昨年9月、同氏の携帯電話などを押収したと報じられ、関連する保険会社から同氏の別企業への融資が適切に開示されていたかも調べられている。現時点で起訴は確認されていない。

 一方、ウォルター氏側はNBAレイカーズを125億ドル(約2兆円)で売却することで合意。チェルシーFCの持ち株売却も報じられたため、ドジャース身売り説まで浮上した。

 ただ、持ち株会社TWGグローバルは8月26日、「ドジャースは売却されておらず、売却手続きも開始されていない」と明確に否定。スタン・カステン球団社長も「売りに出ていない」と断言している。

 そのドジャースは、前オーナーのフランク・マコート氏が経営難の末に2011年に破産申請。翌12年、当時スポーツ界ではほぼ無名だった金融業界の実力者ウォルター氏率いるグッゲンハイム・ベースボール・マネジメントが、21億5000万ドル(約3442億円)という記録的な金額で買収した。

 勝負手はそこからだった。13年にはタイム・ワーナー・ケーブルと25年総額83億5000万ドル(約1兆3370億円)の巨額放映権契約を締結。潤沢な収入を補強に還元し、13年以降は25年まで13年連続でポストシーズン進出、地区優勝12度、リーグ優勝5度、ワールドシリーズ制覇3度。24、25年には25年ぶりとなるMLB連覇も成し遂げた。

 象徴が大谷翔平投手(32)への10年総額7億ドル(約1121億円)契約だ。スターを集めるだけではなく、勝ち続けることでブランド価値と収益を膨らませ、また戦力へ投じる循環を完成させた。かつて破産した名門は、いまや「MLBの盟主」と呼んでも異論の少ない存在へ変貌した。

 だからこそ、身売り説の行方は単なるオーナー交代の噂では済まない。MLBの勢力図そのものを塗り替えた〝ウォルター帝国〟が、この先も同じ形で続くのか。その一点に、球界全体の視線が集まっている。