二刀流の看板を守るために、今はユニホームを脱ぐ勇気が必要なのか。左ヒザ痛を抱えるドジャース・大谷翔平投手(32)の〝強行出場〟に、米メディアから異例の「待った」がかかった。

 大谷は30日(日本時間31日)、本拠地で行われたマリナーズ戦を本人の申し出を受けて欠場。チームは6―2で勝利した。デーブ・ロバーツ監督(54)は翌31日(同8月1日)のレッドソックス戦での復帰に強い自信を示しており、このまま打者として出場を続ける見通しだ。

 しかし、米紙「カリフォルニア・ポスト」のディラン・ヘルナンデス記者は31日、「なぜ大谷はいまだにドジャースのアクティブロースターに名を連ねているのか」と題した記事を掲載。「目先の一試合ではなく、10月のポストシーズンを最優先に考えるなら、10日間の故障者リスト(IL)に入れて治療と休養に専念させるべきだ」と主張した。

 大谷は左ヒザの痛みによって投手としての調整が止まり、右上腕二頭筋にも不安を抱えている。それでも打者としては出場を続けてきたが、29日(同30日)のマリナーズ戦後に再び違和感を球団へ報告。翌日の欠場につながった。ロバーツ監督は、体の状態を熟知する大谷自身の判断を信頼し、率直に申告したことを選手と球団の良好な意思疎通の証しと受け止めている。

 指揮官は過去に、故障を抱えたフレディ・フリーマン内野手(36)の出場意思を尊重した例も挙げた。スーパースターに発言権を与え、それぞれに合った扱いをすることはチーム運営の一部という考えだ。だが、ヘルナンデス記者は、選手の意思を尊重することと、体を酷使させることは別問題だと真っ向から反論。「ドジャースはその一線を越えようとしている」と警鐘を鳴らした。

 同記者が問題視したのは、休養日からわずか3日後に大谷が再び休まざるを得なくなった点だ。ヒザの状態が数週間にわたって出場機会を狭めている以上、悪化の兆候が明確になってから対応したのでは、手遅れになる恐れがある。31日の復帰方針についても「無謀に思える。怠慢に思える」とまで踏み込み、球団が大谷を恐れて必要な決断をためらっているように映ると厳しく断じた。

 ドジャースはナ・リーグ西地区首位を走り、2位ダイヤモンドバックスに大差をつけている。今ここで大谷を10日間欠いたとしても、チームの命運が直ちに傾く状況ではない。むしろ無理を重ね、最も必要とされる10月に状態を悪化させる方が、世界一を狙う球団にとって致命傷となりかねない。

 大谷は自らの価値も、これから迎える勝負どころの重みも理解している。だからこそ、球団が本人の手から一時的に出場権を取り上げ、「大谷を大谷自身から守る」決断が必要だというのが同記者の訴えだ。

 今求められているのは、痛みを押して立ち続ける英雄的な姿ではない。10月に万全の二刀流を取り戻すための、勇気ある〝撤退〟なのかもしれない。