侍ジャパンの〝ラストピース〟が決まった。日本野球機構(NPB)とNPBエンタープライズは4日、3月に開催される第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)代表の残り1枠にレッドソックスの吉田正尚外野手(32)が選出されたことを発表。だが、今回の発表は単なる「追加招集」ではない。実はボストン側が舞台裏で日本代表に「ぜひ吉田をWBCで使ってほしい」と、異例の猛プッシュを行っていたという。

 WBC日本代表30人目の〝ラストサムライ〟に吉田が選出された。背番号は「34」で、最終ロースターは大会運営組織のWBCIが6日に公表する予定だという。吉田自身も「心から光栄。勝利のために自分の役割を全うしたい」とコメントした。発表が「残り1枠」として先送りされたのも、球団との調整やWBCI側の手続きが絡んだためとみられる。

 注目は〝舞台裏〟だ。米メディアの「MassLive」は3日(日本時間4日)に、レッドソックスが出場を了承したと報じていた。その上で球団周辺では「吉田をWBCで動かしたい」という声が強かったという。背景にあるのが、ボストンでの立ち位置の変化だ。吉田は移籍2年目の2024年、左手親指の痛みなどで離脱しつつも108試合で打率2割8分、10本塁打、56打点。シーズン後には右肩関節唇の修復手術を受けた。

 さらに昨季はその影響もあって長期離脱し、55試合で打率2割6分6厘、4本塁打、26打点、OPS.696にとどまった。そして決定打となったのが編成事情。レッドソックスは25年2月にアレックス・ブレグマン内野手(31=現カブス)を獲得し、同年3月には三塁手だったラファエル・デバース内野手(29=現ジャイアンツ)を主に「DH」に据え、三塁はブレグマン――という配置を明確にした。

 もともと主戦場がDH寄りだった吉田にとって席は狭くなり、その〝生命線〟もますますか細くなる。現状でブレグマン、デバースともにレッドソックスから離れたとはいえ、右肩の不調にもさいなまれていた吉田は外野での競争、あるいはトレードのうわさが消えない状況に追い込まれていた。

 だからこそ球団側は吉田に対し「WBCを〝再起の起爆剤〟に」と判断。ア・リーグ球団関係者の1人も「23年の第5回大会で侍ジャパンの一員として発揮した吉田の勝負強さは本物。その後、合流した移籍1年目のレッドソックスでもWBCの余勢を駆る形で140試合に出場し、チーム最高打率でリーグ5位の打率2割8分9厘をマークした。国際舞台で打撃のリズムを取り戻せば、レッドソックスにとっても春以降の起用プランを描きやすい」と指摘する。米メディア関係者も「復活すれば戦力。復活が見えれば市場価値も上がる。ボストンが背中を押す理由はそこだ」と打ち明ける。

 吉田は前回のWBCで全7試合に出場し打率4割9厘、2本塁打、大会記録の13打点。準決勝メキシコ戦の同点3ランは、侍ジャパンの〝転換点〟として今も語り草だ。

 WBC連覇を狙う今回、侍ジャパンのメジャー組は無所属の菅野智之投手(36=オリオールズFA)を含め史上最多の9人とされる。その豪華布陣の最後に滑り込んだ男が、同時にレッドソックス再浮上の鍵も握る――。吉田のひと振りは、侍の命運だけでなく、ボストンの〝次の構想〟も左右しそうだ。