あのパッキャオも熱烈応援を表明している。野球インドネシア代表メンバーを中心に、フィリピン、スリランカなどの代表選手が集結した独立リーグ球団「佐賀インドネシアドリームズ」が、2大温泉地である武雄市と嬉野市をダブルフランチャイズとして誕生した。野球を続けることが難しい環境だけに、選手の情熱は並々ならぬものがある。将来的には先駆者となる〝東南アジアの大谷翔平〟が生まれるか――。

 今月2日、佐賀が誇る2大温泉地を舞台に夢のプロジェクトが本格始動した。監督を務めるのは元ロッテの香月良仁氏(39)。「言葉も宗教も違う若者たちがMLB、NPBを目指して、豊かになりたくて、日本に飛び込んでくる球団になります。自国の子どもたちが『あの選手になりたい』と思えるようなチームを作っていきたい」と力強く抱負を口にした。

 野球インドネシア代表、スリランカ代表の監督を務めた実績を持つ野中寿人氏が中心となり「NEOアジアプロ野球機構」を設立。その傘下の球団として発足した。佐賀を拠点とすることが決まり、熊本、大分、北九州、宮崎の球団が所属し、ソフトバンク三軍との交流戦も行う「九州アジアリーグ」への来季からの準加盟が認められた。

 インドネシア代表を中心に、フィリピン、パキスタン、スリランカの代表選手でチームは構成される。インドや香港などからの参戦オファーも受けているという。インドネシアの国営放送で報道もされるなど、野球大国である日本への進出は反響も想像以上に大きい。フィリピンの英雄であるボクシング界のレジェンドであるマニー・パッキャオが「NEOアジアプロ野球機構」のアンバサダーに就任するなどといった動きも出ている。

佐賀インドネシアドリームズの発足会見にビデオ出演した野中寿人理事(左)、ラマダハン・リスキー投手(中央)とアグバール・ムハマッド投手(右)
佐賀インドネシアドリームズの発足会見にビデオ出演した野中寿人理事(左)、ラマダハン・リスキー投手(中央)とアグバール・ムハマッド投手(右)

 資金面には自信がある。世界4位の人口を誇るインドネシアは日本企業にとってもブルーオーシャンとなる。球団は同国とのパイプは強固なだけに、進出への橋渡しをする代理店業務なども行い収益化もしていく。そのほか同国にほとんど存在しないスポーツショップや整体といったスポーツ事業の展開なども予定する。

 事業の幅は広い。例えば水産業もその一つだ。インドネシアは世界トップクラスの海岸線の長さを持ちながら養殖技術が未成熟。その一方で佐賀はカキなどの養殖が盛んだ。すでに著名なカキ職人をインドネシア水産省に引き合わせており、球団が会社から委託を受けて漁業をやることも検討されているという。もちろん、佐賀、日本の魅力を東南アジア諸国に発信し、地域に還元していく役割も担っていく。

 山下翔一GMは「(インドネシアを中心に)国を上げて応援してくれるような形となる。その地域にないものを事業化して、選手たちのセカンドキャリアにもつなげていきたい。人気球団となることで武雄、嬉野の産業の発展にも寄与したい」とコメント。そのうえで「未来のレジェンドをアジア中、世界で発掘し、育成できるような球団になっていきたい。たった一人でもスーパースターが出ることがきっかけで次の世代が増えていく。その礎を作る」と話した。

 代表選手が揃うとはいえ、もちろん野球の実力的には日本とは雲泥の差がある。ただ、ポテンシャルは底知れないものがある。今春のWBCでチェコ代表の真摯に野球に向き合う姿が感動を生んだように、プロチームがなかった地域で野球を続けてきた選手たちだけに、並々ならぬ情熱を持っている。ジャパニーズドリームを求めて挑戦するモチベーションも高い。各自が本業だった警察官や公務員、販売員などの職業を辞めて、インドネシアの平均月収の倍以上の給料で「プロ野球選手」としてプレーしていく。

 発足会見には侍ジャパンの前監督・栗山英樹氏がVTR出演で登場。「なかなか野球で食べていくというのは大変かもしれませんけど、おそらく能力的にはすごくある皆さんが、いろいろなものを身につければ、チャンスは出てくると思います。ぜひ一度見に行きたいと思います。ご自身の夢をかなえてください」とメッセージを送った。

 選手たちは武雄市に住み込み夢を追う。東南アジアの野球少年にとっても野球を続けていく上で目指す道もできた。今は野球後進国でも大谷翔平のようなスーパースターが誕生すれば…。アジアの野球のレベルアップにつながっていくはずだ。