母国からは今も〝監視の目〟が注がれているようだ。アジアプロ野球チャンピオンシップ1次リーグ(東京ドーム)で日本代表・侍ジャパンは17日に韓国代表を2―1で下し、2連勝。いち早く19日の決勝戦進出を決めた。一方で、宿命の日韓戦に気合十分で臨んだはずの韓国はライバル国の前に辛酸をなめ、零封負けこそ逃れたものの、8回まで三塁すら踏めず悪戦苦闘。その舞台裏では〝同じ失敗を二度と繰り返すな〟とばかりに厳しい外出制限まで設けられ、すっかりガチガチになった韓国代表の姿があった。

 終盤まで韓国打線は侍投手陣を打ち崩せず、8回まではスコアボードに「0」が並び続けた。9回に3番手・田口から代打の金揮執(キム・フィジプ)が左翼スタンドへソロをたたき込んだが、反撃はこの一本のみ。結果的に1点差に詰め寄ったとはいえ、無念の黒星を喫した韓国側の試合後ベンチは重苦しいムードに包まれた。

 会見の場に姿を見せた柳仲逸(リュ・ジョンイル)監督(60)は「序盤にチャンスがあったがつながらなかった。(侍ジャパン先発の隅田は)球種が多かった。映像で見るより素晴らしい投手だった」と敗戦の弁。ライバル国との宿命の一戦で「完敗」したことを認めた。

 この日の日本戦を含め今大会は韓国代表にとって「みそぎの場」となっているようだ。10月の杭州アジア大会で金メダルを獲得した面々が約半数を占める若手中心のメンバー構成で臨んでいるが、心なしかチーム内に「フレッシュ」なムードはほとんど感じられない。それもそのはずで、韓国球界関係者によると、母国で今大会直前に行われた代表合宿では「同じ過ちは2度許されない」と〝国家レベルの通達〟が出されたという。

 その内容の趣旨は「まずは試合で国民に恥ずかしくない結果を示すこと。遊んだり、リラックスしたりするのは、恥ずかしくない結果を示してからだ。常に国民の模範となる行動を心がけるようにすべき」というもの。今の韓国代表チームにとっては、まさに「言い得て妙」の内容だった。

 今年3月開催の第5回WBC1次ラウンド(東京ドーム)で韓国は宿敵の日本に黒星を喫するなど屈辱の敗退。3大会連続でWBC1次リーグ敗退となったことで国内では糾弾の声が高まったが、これに拍車をかけたのが大会期間中の〝飲酒騒動〟だった。

 金広鉉投手(キム・ガンヒョン=SSG)ら代表3選手がWBC期間中に東京・赤坂の歓楽街に繰り出し、女性の接待を伴う飲食店で連日未明まで酒浸りの日々を送っていたことが、一部韓国メディアの報道によって発覚。韓国野球委員会(KBO)の調査で事実として確認され、大騒動に発展した。最終的には当該3選手が異例の〝公開謝罪〟によって幕引きされたものの、今も国内では「韓国野球代表の黒歴史」として汚点を残したままとなっている。

 それだけに今年3月のWBC以来、8か月ぶりに来日した韓国代表に対し、母国からおのずと厳しい視線が向けられているのも当然の流れと言える。同じ日本の東京で行われる今大会で「また誰かがハメを外すのではないか」と目を光らせられているからだ。

 今大会初戦となった16日のオーストラリア戦はタイブレークの末、サヨナラ勝ちで辛勝。ネット裏で視察したMLB関係者が思わず「明らかに動きが硬かった」と振り返ったほどに、韓国代表は極度の重圧にさいなまれているようだ。

「韓国の選手は日本に行く際、外で飲食したり、夜の街へ出歩いたりすることを楽しみにしている。でも、今大会期間中は外出もほとんど自由にできず、門限のような形で何かしらの制限が課せられているようだ」と韓国球界関係者。情報を総合すると、今大会の韓国代表には〝軍隊並み〟の厳格なスケジュールも敷かれている模様だ。

 成績もさることながら今大会では何よりも儒教の精神のもと「自粛」を貫くことが、韓国代表の重要なミッションとなりそうだ。