大物争奪戦の裏で、本当に動きやすい〝勝負の一手〟が静かに値を上げている。米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」は3日(日本時間4日)、8月3日(同4日)のトレード期限を前に、意外な人気銘柄となり得る2選手を特集した。主役はカージナルスのジョジョ・ロメロ投手(29)とジャイアンツのルイス・アラエス内野手(29)。市場では大物先発や中軸打者の名前が先行するが、実際にポストシーズンを狙う買い手が欲しがるのは、穴を的確に埋める即戦力でもある。資金力豊富なドジャースやヤンキースのような強豪が補強カードを切るなら、こうした〝隠れ物件〟に食指を動かしても確かに不思議はない。

 ロメロはフィリーズでメジャーに上がり、現在はカージナルスのブルペンを支える左腕。今季は27試合で防御率2・96と安定感を示している。派手なクローザーではないが、左打者対策、終盤の1イニング、連投を含めた運用のしやすさは短期決戦で重みを増す。契約は今季限りで、再建色を強めるカージナルスが売り手に回れば、放出候補の筆頭格となる。獲得側から見れば負担は比較的軽く、見返りも超大型にはなりにくい。だからこそ争奪戦は水面下で熱を帯びる。

 一方のアラエスは、現代野球では希少価値が増した「打てる内野手」だ。ツインズ、マーリンズ、パドレスで3年連続首位打者に輝いた実績を持ち、今季も打率3割2分3厘、2本塁打、23打点、OPS・799と健在。長打力で相手をねじ伏せるタイプではないが、三振が少なく、走者を置いた場面で打席の質を保証できる。得点圏の1本、下位から上位へつなぐ1本が欲しいチームにとって、こういう打者はポストシーズンで効く。

 ジャイアンツはすでに地区順位表で後退しており、期限前に主力整理へ動く可能性がある。アラエスも今季終了後にFAとなるため、売り手側にとっては対価を得る最後の好機となる。ドジャースなら厚い打線にさらに確実性を足せるはずだ。そしてヤンキースならば、波のある打線にコンタクト力を注入できる。いずれも決定的な穴ではなくとも、10月の勝敗を分ける微差を埋める補強になり得る。

 期限前の市場で本当に価値を持つのは、看板の大きさだけではない。ブルペンの左腕と三振しない巧打者。ロメロとアラエスは、派手さの裏で強豪の計算を狂わせる「隠れ人気物件」として、これから名前を挙げていきそうだ。