日本シリーズ第3戦(31日、甲子園)は、オリックスが阪神に5―4で逆転勝ち。2年連続日本一に向けて連勝を飾り、2勝1敗とした。本紙評論家・前田幸長氏は勝負の分かれ目となった両軍先発の投球に深く〝メス〟を入れ、独自の視点で寸評した。 
 
【前田幸長 直球勝負】非常にもったいない点の取られ方だったように感じられる。阪神・伊藤将は立ち上がりからテンポ良くイニングを重ねていたが、中盤で崩れた。 

 4回に頓宮の同点ソロを被弾し、5回にも無死から連打を浴びて併殺崩れの間に勝ち越しを許したシーンまでは致し方ない。しかしながら首をかしげざるを得ない場面は、その後だ。

 1点をリードされて迎えた5回二死一、二塁。打席の宗に対して、阪神バッテリーはフルカウントから勝負球に142キロの真っすぐを選択した。真ん中高めに投じられた直球を宗は〝待ってました〟とばかりにとらえ、右中間を破る2点適時二塁打。マスクをかぶる坂本が構えたミットの位置はほぼ真ん中で、制球力に優れる伊藤将も要求通りに投げていた。

 宗には全8球のうち、インサイドを2球。ファウルで2球粘られた後、7球目に外角低めいっぱいのカットボールがわずかにゾーンを外れてボール判定になった。それでも、ここまでは頭脳的な組み立てでいい配球だった。

 だが、ウイニングショットもカットボールでいくかと思われただけに、阪神バッテリーが予想もしない真ん中高めの直球をチョイスしたのは驚きだ。フライアウトを取るつもりだったのかもしれないが、得点圏打率が高く勝負強い宗を攻略する上では、結果的に見てもかなり「安易な攻め」だった。 

 一方、5回1失点で好投したオリックスの先発右腕・東は今後もまだまだ成長していく楽しみな逸材だ。球種が豊富で、どのボールでもストライクを奪える。特にツーシームが素晴らしい。熱狂的な虎党で埋め尽くされた甲子園のマウンドにおいて、あれだけの投球内容を見せたのだからハートの強さも抜群だ。

 育成出身の23歳。オリックスのハイレベルな選手育成プログラミングに加え、選手層の厚さをあらためて認識させられる。(本紙評論家)