プロ野球は31日、トレードなど今季中の補強期限が終了した。この日はヤクルトが青柳晃洋投手(31=前フィリーズ2A)の獲得を発表。16日には藤浪晋太郎投手(31=前マリナーズ3A)もDeNAに加入した。意外だったのは積極補強が得意な日本ハムが〝静観〟したことだ。同日のソフトバンク戦(エスコン)で4―5と惜敗し、再び首位陥落となったものの新庄剛志監督(53)の胸の内には急成長を遂げたチームへの「確固たる自信」と「補強不要の思い」が渦巻いている。
チームは現在、ソフトバンクと激しいパ・リーグ首位争いの真っただ中だ。この日は本拠地での直接対決第3ラウンドで9回に1点差まで迫りながらも敗れ、同カード負け越し。再び首位の座を明け渡したが、3位のオリックスと6・5ゲーム差となっている状況を鑑みれば、後半戦は終盤までホークスとV争いのデッドヒートを繰り広げる可能性が高い。
そんな中、この日にプロ野球界は補強期限の最終日を迎えた。本来なら日本ハムは2016年以来となる悲願のリーグ優勝に向けて積極的にトレードでウイークポイントを補い、鷹を筆頭としたライバル球団を突き放したいと考えても不思議ではないはずだ。しかも新庄監督の体制になった2022年以降、7件のトレードを成立させた経緯もある。ところが球団は今夏、動かなかった。
背景には何があったのか。実は先日、新庄監督に直接問うと次のような本音を漏らしていた。
「(日本ハムで試合に)出られない選手を他のチームで道を開かせたい気持ちはあったんです。トレードでね。こんだけウチの層が厚くなったので例えば4対4の若い子だけのトレードとか。それをしてあげたらいいかなっていうのもあったんですけどね」
自軍で思うように起用できない選手を放出し、新たな選手を受け入れて再生させる――。かねて日本ハムは育成に定評がある球団だ。何より指揮官自ら「選手再生力」に自信を深めていたことから、実際のところ水面下ではトレードも模索していた。だが、実行に移さなかったのは自軍選手の想像以上の急成長が大きかったという。
「例えば野手は今までやってきた一人の選手に3つぐらいポジションを守らせること。これがみんなうまくいって今は調子が悪いところ(ポジション)に埋めていく作業が完璧にハマってますから。これができたことによって、今の順位(首位)でいられるだろうなという気持ちで戦っているので。それに先発(投手)メンバーも8人で回してほしいと言うところを(開幕前に)投手コーチに伝えて、それもコーチたちのおかげでうまくいってね。これはデカいですよ」(新庄監督)
補強を検討する前の時点で、野手たちは不慣れなポジションを任されても着実に自らの役割をこなす。おかげで今季は弱点となるポジションが皆無になった。投手陣も「先発完投」がチーム内で主流となり、手薄と言われた救援陣に登板機会が回ってこないケースすら目立ち始めた。このチーム状況では余計な補強は必要なかったのだろう。
さらに選手を信じて何度もチャンスを与えるという、新庄監督ならではの恩情も「トレード回避」につながったと言えそうだ。
「今は誰を(試合に)出してもいいからね。例えば外野なら五十幡君、矢沢君、水谷君とかみんな使いたいし。そのメンバーで松本(剛)君が首位打者を取った時のバッティングをしてくれたら僕、(誰を起用するか)迷っちゃうし。これまでずっといい選手の使い方を考えてやった結果が今なので。そういう選手たちを見るのも楽しみですしね」(新庄監督)
仮にトレードで新戦力を補強しても存分に起用する場がない。それどころか新戦力の加入は、ここまで育てた選手の出場機会すら奪いかねないことになる。それならともに戦い続けてきた現有戦力を信じ、リーグ優勝を目指したい――。言葉の節々には、こうした指揮官の切なる思いも込められている。
チームのまとまりがここ数年で最も感じられる今、戦力面での不安はない。後はチーム一丸となってリーグ頂点に進むだけだ。「動かぬ日本ハムと指揮官」には、そうした新庄流の深謀遠慮が見え隠れする。












