不振続く侍右腕の苦悩とは――。今春開催されたWBCに出場したソフトバンクの松本裕樹投手(30)は、今季ここまで11試合に登板して1勝2敗、2ホールド、4セーブ、防御率4・22。昨季は「最優秀中継ぎ投手」に輝いたが、故障や不調が目立つWBC組の例に漏れず苦しんでいる。その胸中に迫った。

 9日のロッテ戦(みずほペイペイ)では同点の9回からマウンドに上がり、決勝弾を含む4連打を浴びるなど精彩を欠いた。要した球数は34球。5月に入り、首脳陣から「連投解禁」を容認されたが、翌日はベンチ入りメンバーから外れた。

 シーズン開幕から1か月半、WBC出場組の苦悩が浮き彫りとなっている。オリックス・宮城が左肘内側側副靭帯損傷、ロッテ・種市が左アキレス腱を断裂。海の向こうではエンゼルス・菊池が左肩の炎症で負傷者リススト入りし、戦線離脱を余儀なくされた。明らかな不調に陥っている実力者もいる。昨季「沢村賞」を獲得した日本ハム・伊藤は今季最初の月間防御率(3、4月度)が「3・99」。結果を望まれる中で、辛抱の投球を強いられた。

 開幕前からソフトバンクでは「中継ぎ不安」がささやかれていた。苦しい台所事情を横目に、じくじたる思いで戦っているのが松本裕だ。今月に入り、今季最速155キロをマーク。「だんだんなじんできた」とは言うものの本来の姿には遠く及ばない。

 WBC出場経験者にしか分からない苦労がある。「形だけ仕上げないといけなくなるんで、いろんな過程を飛ばして入っているような感じ。そこはやっぱり難しい」。キャンプのようにまとまった調整期間もオープン戦もない。3月上旬に緊迫感ある国際大会で投げる「形」をまず整えるために犠牲にするものは多い。

 頭では分かっていても、マウンドに立てば責任感が勝ってしまうもの。「開幕して1か月くらいは、今年の自分を定める期間になる。オープン戦の期間をシーズン中に持ってこないといけない中で、そこでも結果を求められる。そこをうまく割り切れずに力でいったり、力んだりすると故障しやすいのかなと思う」。離脱を余儀なくされた仲間を思いやり、自らに言い聞かせるようだった。

 松本裕の真骨頂は、局面での冷静な判断と辛抱強さにある。鷹にとって最悪の事態はシーズン序盤に浴びる痛打ではない。日本野球の誇りのために戦った男たちは今、我慢強く戦っている。