苦しむ主砲の隣に、球団が手放せない〝読める男〟がいる。米放送局「CBSロサンゼルス」がドジャースの日本人選手運営・戦略担当ディレクターで大谷翔平投手(31)の通訳も務めるウィル・アイアトン氏(37)をクローズアップし、特集した。

 ドジャース専門メディア「ドジャース・ビート」も、同放送局がアイアトン氏に焦点を当てた番組を制作したことを報じている。CBSロサンゼルスが強調しているのは、アイアトン氏の仕事が単なる通訳にとどまらない点だ。

 東京生まれ、東京育ちで、米大学を経て、2012年の第3回WBC予選ではフィリピン代表の内野手としてプレー。レンジャーズ傘下での選手生活後は、ドジャースで前田健太投手(38=現楽天)の通訳を務め、球団内ではデータ分析や選手育成にも携わってきた。水原一平元通訳(41)の問題発生後は急きょ大谷のそばに立つことになったが、現在は言葉だけでなく「空気、間合い、選手の心理」までくみ取る重要な存在になっている。

 その価値は、今の大谷とドジャースの苦境でより際立つ。ドジャースは10日(日本時間11日)、本拠地ドジャー・スタジアムでブレーブスに2―7で敗れ、同カードに負け越した。大谷は4打数無安打1三振。7回二死一、二塁の好機でも一ゴロに倒れ、今季は打率2割4分1厘、6本塁打、16打点、OPS・792まで下降した。5月に入ってからは31打数4安打、本塁打なし。投手としての存在感とは対照的に、打席では本来の破壊力を取り戻せていない。

 チームも同日現在、24勝16敗でナ・リーグ西地区首位に踏みとどまっているとはいえ、パドレスと並走状態。直近2試合はいずれも2―7で落とし、打線全体も停滞している。だからこそアイアトン氏の役割は重い。大谷の言葉を正確に伝えるだけでなく、データ、文化、精神面をつなぎ、周囲の雑音を和らげる。

 大谷が再び打席で沈黙を破る時、その裏側には〝気配を読む〟男の静かな支えがある。