足元が揺らぐ王者の試合で、敗戦の9回に別の物語が生まれたことが話題となっている。ドジャースは10日(日本時間11日)に本拠地ドジャースタジアムでブレーブスに2―7で敗れ、同一カード2連敗。24勝16敗でパドレスと並ぶナ・リーグ西地区首位に踏みとどまっているが、直近10試合は4勝6敗。昨季の圧倒感は薄れ、独走ムードにも影が差している。

 象徴的だったのが、大谷翔平投手(31)の沈黙だ。この日は4打数無安打1三振。今季40試合で打率2割4分1厘、6本塁打、16打点、OPS・792にとどまる。二刀流の看板はなお巨大だが、打者としての爆発力は明らかに鈍っている。チーム全体の失速感と、大谷のバットの重さが重なって見える。

 その陰でワイアット・ミルズ投手(31)が、約3年8か月ぶりにメジャーのマウンドへ戻ってきた。米メディア「ファンサイデッド」は、エドウィン・ディアス投手(32)の長期離脱に伴って昇格した元ロイヤルズ右腕の復活劇に注目。ディアスは右ヒジの関節鏡手術を受け、10日(同11日)に60日間の負傷者リストへ移された。3年6900万ドル(約108億円)の守護神の離脱が、崖っぷちにいた右腕の扉を開いた。

ブレーブス戦が久々のMLB登板となった右腕ミルズ(ロイター)
ブレーブス戦が久々のMLB登板となった右腕ミルズ(ロイター)

 ミルズの前回メジャー登板は2022年9月3日(同4日)のタイガース戦。そこから1345日が過ぎていた。23年7月にトミー・ジョン手術を受け、24年はメジャー登板なし。今季は傘下3Aオクラホマシティーで14試合に登板し、3勝2敗、防御率3・26、19回1/3で28奪三振、7四球と結果を積み上げた末の復帰だった。

 ただし、復帰登板は美談一色ではない。9回二死から先発のジャスティン・ロブレスキ投手(25)を救援したが、2安打を浴び、ロブレスキに残した走者2人の生還を許した。自責点はつかなかったものの、快投ではない。それでも最後の打者を中飛に仕留め、長く閉ざされていたメジャーの扉を自力で押し開けた事実は残る。

 大谷のバットは湿り、チームは同率首位に追いつかれた。高額守護神は右ヒジを痛め、先発も踏ん張り切れない。その悪い流れの中で、長い時間を経て再び戻ってきた伏兵だけが、わずかな希望を差し出した。ドジャースの巨大戦力はスターの一撃だけでなく今、こうした再生組の腕にも活路を求めている。