完全復調は確信的だった。今大会初めて4番を外れた村上宗隆内野手(23=ヤクルト)が2本の長打を放って、栗山監督の荒療治に応えて見せた。16日に行われたWBC準々決勝のイタリア戦(東京ドーム)に「5番・三塁」で出場。5回無死一、二塁で中越えの適時二塁打を放つと、続く7回にも左翼手のグラブを弾く二塁打で復調を印象づけた。

 ベンチではじける笑顔には理由があった。2本の長打はいずれも逆方向への打球。「僕の調子というか、そっちの方向に打球が飛び始めればすごくいい(傾向)。狙ってもなかなか飛ばない状況だったので。一つポイントをつかむのが大変だったけど、今はこれでイケるぞという感覚がある」。1次ラウンド後にあった中3日の空き日を有効活用し、フォームやトレーニングの仕方を見直した。「打つ、打たないは結果であって、どこに気づくかが大事」。体の動かし方、軸足の乗せ方、タイミングの取り方を調整して「これだったら投手に入っていけるという感覚」をつかんだ。第1打席は厳しいコースを見逃して三振に倒れたが、続く打席では四球を選んで「打てる根拠があったので積極的にいった」と第3打席は初球、第4打席は2球目をファーストスイングで仕留めた。

 1次ラウンドは14打数2安打、7三振の低空飛行。だが、トンネルの出口が近いことを確信していた人物がいた。初代WBC優勝監督で連日視察に訪れていたソフトバンク・王貞治球団会長(82)だ。「村上なりの苦しみの中で戦っているけど、これはもうちょっとのことで変わるから。(11日の)チェコ戦で1本ヒットを打って、気持ちもだいぶ変わったはず。あとは自分の中の、少しのキッカケだけだからね」。落ち着きを取り戻して、技術の改善点を見つけるのは時間の問題と言わんばかりだった。見立て通り、村上は15日の前日練習で「内緒」と中身こそ伏せたが、明確なキッカケをつかみ「打てる根拠」をついに見つけた。

 目を覚ました〝元4番〟。力強く完全復調を表明する男を定位置に戻すのか、栗山監督の手腕にも注目だ。