沈黙の大砲は目覚めるか。打撃不振に苦しむWBC日本代表・村上宗隆内野手(23=ヤクルト)に、あのレジェンドから救いの手が差し伸べられた。2013年の第3回大会で4番打者と正捕手、さらには主将の〝三足のわらじ〟をこなした巨人・阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチ(43)が送った「侍の4番の心得」とは――。

 侍ジャパンは14日に東京ドームで全体練習を行い、16日の準々決勝に向けて調整を進めた。悲願の世界一奪回へチームは快進撃を続ける一方で、結果を出せずにいるのが〝不動の4番〟村上だ。

 1次ラウンドの4試合では打率1割4分3厘、0本塁打、2打点と低迷。自身の前の打順を打つ1番・ヌートバー(カージナルス)、2番・近藤(ソフトバンク)、3番・大谷(エンゼルス)、さらに後を打つ5番・吉田(レッドソックス)はいずれも打率が4割を超える。村上が復調すれば、文字通りの「史上最強打線」がいよいよ完成し、世界の頂点にもグッと近づいてくる。

 村上のつらい胸中は誰もが分かっている。最近では、左脇腹を痛めて代表を辞退した鈴木(カブス)も海の向こうから「顔を上げて頑張れ」と村上に動画を送って激励するなど、周囲が気にかけている。

 日の丸だけでなく4番の重圧ともどう向き合っていけばいいのか…。普段はライバルでも今は日本球界が総力を結集する時。13年の第3回大会で4番だけでなく、チームの中心的役割をこなした巨人・阿部ヘッドはこう唱えた。

「がまん。がまんだよね。責任感が強い子だし、とにかく背負わずにやることだね。それが一番難しいんだけど」

 阿部ヘッドにとっては2度目のWBC出場だったが、本大会前から本調子にはなかった。それでも「普段通り」を自分に言い聞かせ、笑顔を絶やさず国際大会ならではの即席チームを束ねようと奔走した。そして、準決勝のプエルトリコ戦で自らが3度の好機で凡退。侍ジャパンの敗退とともに、当時33歳だった阿部ヘッドは〝代表引退〟を決意した。それと同時に願ったのが、次世代を担う侍戦士たちの台頭。その資質を十分すぎるほど兼ね備える村上が苦しんでいる。阿部ヘッドは球団の垣根を越え、葛藤し続ける若武者を諭すように短い言葉の中に思いを込めた。

「大丈夫」

 今回のWBCは特に世間の関心も高く、村上の低迷ぶりも連日大きく取り上げられている。そうした喧騒に惑わされず、自分を信じろということなのだろう。今後は負けたら終わりの一発勝負。村上はレジェンドの言葉を追い風に息を吹き返せるか。