プロ野球の現役ドラフトが9日に実施され、12人の選手が新天地で再スタートを切ることになった。中でも「覚醒なるか?」と話題となっているのが、楽天から巨人へ移籍が決まったオコエ瑠偉外野手(25)だ。そんなかつてのドラフト1位選手について、本紙評論家の伊勢孝夫氏は「あいつとイメージがかぶる」「ずばぬけた才能を生かしてやることができなかった」と今でも後悔しているのが、ヤクルトコーチ時代の教え子・長嶋一茂氏(56)だという。オコエと一茂氏の共通点とは――。
私の指導者時代の心残りは、一茂を一人前にしてやれなかったこと。言うまでもなく一茂は「ミスタープロ野球」と呼ばれた長嶋茂雄さんの長男で、1987年のドラフト会議でヤクルトがドラフト1位で獲得した大型内野手だった。立大時代は東京六大学リーグで11本塁打を放つなど、パンチ力のある打撃が売りで「おやじ譲り」というよりはむしろ、パワーだけなら父親以上のものを持っていた。練習でもほれぼれするような打球を飛ばしていたものだが…。
ミーティング中にノートにマンガを描いていたり、早出特打をやろうとしなかったり、野球に取り組む姿勢については何度も叱ったし、話し合いもした。打撃フォームの欠点についても、本人合意のもと練習方法をあれこれ工夫してみたりもしたが、練習でよくても試合ではできなくなる…という繰り返し。結局は改善することはできなかった。
これまで私が見た選手のなかで、一茂はナンバーワン。〝スターになれる素材〟を持っていた選手だった。「素材はいいのに…」という点ではオコエとまったく同じ。今にして思えば、もっと付きっ切りで毎日のように密着し、信頼関係を築くべきだった。ここまで自分のことを思って指導してくれる、愛情を持って接してくれる…。選手はそこで初めて聞く耳を持ってくれる。そのうち練習でいい打球が出るようになって、その選手が明らかに変われば、ほかの選手も寄ってくるようになる。そういう意味では、オコエに対してもコーチが付きっ切りで指導し、信頼関係を築き、まずは聞く耳を持たせることが大事だと思う。
では誰が適任なのか。一軍に帯同させるならデーブ(大久保博元打撃チーフコーチ)が練習前のアーリーワークに引っ張り出すのもいいかもしれないが、ファームならば、元中日の石井昭男くんが巨人の巡回コーチをやることになったという。彼は打撃理論がしっかりしていて、熱心なタイプだと聞いている。周囲には「特別扱い」のように見えても構わないから、誰かしら専属のような形でコーチを一人つけたほうがいい。
オコエの類いまれな素材を引き出すことができれば、担当したコーチはもちろん、巨人もチームとして見直されることだろう。おそらく一茂よりは、手がかからないはず。注目したい。
(本紙評論家)












