ソフトバンクのドラフト3位・野村大樹内野手(18=早実)が「父との約束」を胸に、初のキャンプに臨んでいる。1年生から名門校の4番打者として高校通算68本塁打を放ったスラッガーは、意外にも父の反対を押し切ってプロ入り。5年を目安に「芽が出なければ引退」の悲壮な決意でプロ人生をスタートさせた。

 早実では1学年上の清宮(日本ハム)を差し置いて1年生から4番を張った。その自負は「打撃なら根尾(中日)、藤原(ロッテ)には絶対負けません。同世代では一番だと思ってプロに入ってきましたから」との言葉にも表れている。

 それでも、浮かれたところはない。プロ入りに際して父・大地さん(45)と結んだ約束があるからだ。「野球選手として芽が出なかったら、潔く現役を退いて大学に入り直すと。僕と父の中で(猶予は)5年くらい。それまでに野球で成功するのが難しいとなれば、会計士を目指して勉学に励みます。だから、あまり時間がないんです」

 大地さんは数百億円単位の企業売買に携わる厳格なエリート銀行マン。高3の春まで野村のプロ入りに賛同することはなく、何度となく行われた家族会議でも許しは得られなかったという。大地さんはビジネスマンとして各業界の「一流」を見てきた。一流がしのぎを削るプロ球界が、甘い世界ではないからこその反対だった。

 医師を目指していた野村がプロ野球選手を志したのは中学時代。その時点で高校→プロの人生設計をおぼろげに描いていた。他の強豪校より試合数の少ない早実で、加えて“清宮余波”で他校よりも注目を浴びる中、価値ある高校通算68本塁打を放った。父を説得するためには実力で示すしかなかった。野村は「最後の夏、2試合に1発打ったらプロに行かせてほしい」と父に提案。結果、30試合で17本塁打し、プロへの扉が開いた。

 ソフトバンク入団が決まった後、父からもらったメールには「自信を持ってプロに送り出すから頑張りなさい」と記されていた。ただ「芽が出なかったら…」との断り書きも。そんな経緯が、18歳の野心をたくましくしている。

 野村は「早実の大先輩である王会長の下で野球ができるのも何かの縁。ソフトバンクで必要不可欠な存在になるのがゴール」と意気込む。1月の新人合同自主トレでは休日返上で一日800スイングをノルマに振り込んだ。その姿に、韓国プロ野球1000勝監督で“鬼の指導”で知られるソフトバンク・金星根コーチングアドバイザーも「彼はよく振れるし、大きいのが打てる。楽しみな存在だね」と目を細めた。

 今キャンプでも休日を含めて素振りは欠かさず「宿舎でも一人の時間を見つけて部屋で振っています」。先輩たちより早く食事を済ませたり、入浴の時間をずらすなどして、5人部屋の広いスペースで目いっぱいバットを振っている。

 もちろん、5年でプロ生活を終えるつもりはない。野村の挑戦は始まったばかりだ。