DeNAの山本祐大捕手(27)とソフトバンクの尾形崇斗投手(26)、井上朋也内野手(23)の交換トレードが12日に成立し、両球団から正式発表された。ベイスターズはゴールデン・グラブ賞、ベストナインにも輝いた主力捕手を放出。先発整備が急務となり〝格差〟を受け入れる形で合意に達した。今回、先手を打っていたのはソフトバンク。鷹の積極的なジャブが奏功したトレードの舞台裏に迫った。

 まさに「サプライズ」な電撃トレードだった。「なぜ山本を出すのか。何か裏があるのではないか」。球界内でも、いぶかしむ声が上がるほどだった。DeNA・木村球団社長は「山本祐大選手を積極的に放出しようという思いがあったわけではなく、先発投手の獲得を模索する中、ソフトバンクから山本という固有名詞が出た」と経緯を説明。新戦力のコックスとデュプランティエが戦線離脱する誤算が生じ、長期的視野に立って助っ人頼みの先発編成からの脱却を望む中で、不釣り合いとも取れるトレードを受け入れざるを得なかった事情がにじんだ。

 経緯をたどれば、一気にまとまった話ではない。序章として、かねてソフトバンクが山本に目をつけ、コンタクトを取っていた。昨年からホークスの編成トップに着任した城島CBOは国内市場の活性化を強く望み、就任直後から積極的なトレードを画策。その〝仕掛け〟の一つとして山本の名を告げていた。昨季から主戦を担う海野隆司捕手(28)に続く2番手捕手の台頭が乏しい状況。海野の有事に備えると同時に、年齢の近い選手同士で切磋琢磨する環境を整えたかった意図が読み取れた。加えて先を見据えたFA市場、ドラフト候補を見渡した末に編成面で効果的な捕手補強が見込めないと踏んだ節もある。

 トレードは得てして〝求めた方〟が損を受け入れるケースが多い。事態が急転したのは、DeNAの先発コマ不足が表面化して以降。求める立場に追い詰められたベイスターズが生きのいい投手をホークス側に打診した。尾形はDeNAが思わず食いつく「好み」の投手だった。回転数やホップ成分は球界トップレベル。野球を数値化、可視化する「最先端の野球」を掲げるDeNAに、最速159キロを誇る右腕はNPB通算90試合、防御率4・00の実績以上にまばゆく映ったとみられる。ホークス陣営も山本と尾形の「1対1」で成立するとははなから思っていなかっただけに、一軍定着が難しかった2020年ドラフト1位・井上を差し出し、落としどころをつけた形だ。

 急場で「投手が欲しい」とアプローチしても、望む選手を差し出してくれる球団は皆無に等しい。先手を打った段階では相手に大きな見返りを求められて空振りに終わったとしても、先方が窮地に陥れば立場は逆転する。鷹の〝前振り〟が効果的に作用したトレードだった。