勝利の輪の外で、若き右腕は悔しさをのみ込むしかなかった。巨人・戸郷翔征投手(26)は12日の広島戦(岐阜)に先発し、5回6安打3失点で降板した。チームは9回に佐々木の2ランで5―3とサヨナラ勝ちを収めたが、戸郷の今季初勝利はまたもお預け。白星の歓喜とは対照的に、かつてのエースには課題が重く残った。

 2回に大城のソロで先制点をもらったが、4回一死満塁から田村に同点打を浴び、続く床田の内野ゴロの間に勝ち越しを許した。直後に増田の適時打で試合は振り出しに戻ったものの、5回には坂倉に勝ち越しソロを被弾。帽子を取りながら天を仰ぎ、悔しさを隠せなかった。

 試合後も表情は晴れない。「最後に本塁打を打たれて…。ああいう投球は僕としては納得できないところでした」。普段はマウンドで感情を大きく出さない右腕が、ここまで悔しさをにじませたのは、一軍登板にかける覚悟が大きかったからだ。

登板前の練習で、逆立ちしてバランスを整える巨人・戸郷翔征
登板前の練習で、逆立ちしてバランスを整える巨人・戸郷翔征

 一軍昇格直前の4月末、戸郷は「立場的には抑えないと『また二軍に』というのは覚悟していますし、それくらいし烈な争いをジャイアンツの先発陣はしている。そこに割って入るのは簡単なことじゃない」と危機感を口にしていた。過去の実績だけでローテーションが保証される状況ではない。周囲では「復活勝利」への期待が高まる。それでも戸郷自身は、今季初勝利だけで答えが出るとは考えていない。

「ここまでやってきたことが、それだけで正解だったと思えるかというと違う。来年、再来年、その次を見て、自分の中で『いいシーズンを送れたな』というのが続けば、初めて良かったと思える」とも語っていた。

 チームがサヨナラ勝ちで勢いを得た一方、戸郷の時間はまだ止まったままだ。背番号20が本当の意味で報われる日は、巨人にとっても反攻の合図になる。