曇天の沖縄の空に、白球は溶けるように消えた。練習試合・DeNA―阪神戦(18日、宜野湾)、虎のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明内野手(21=近大)の第5打席。2点リードの9回二死二塁の場面で相手投手・伊勢が投じた真ん中高めの甘い球を見逃さずに強振すると、右翼から三塁方向へ向けて猛烈に吹く強風をものともせず打球は高々と舞い上がった。中継のテレビカメラも打球方向を見失うほどの規格外な弾道。リプレー映像により、打球はバックスクリーン右に設置された電光掲示板の最上部を越えていったことがようやく判明した。

 ベンチから戦況を見守った矢野監督も「エグいな…」と言葉を失うほどの飛距離140メートルの驚弾。この試合だけで1本塁打、2二塁打を含む5打数4安打3打点の大活躍となったが、試合終了後、報道陣の取材に応対した佐藤輝の表情には高揚感や興奮した様子は見られない。いつもと変わらぬマイペースな笑みを浮かべながら、第5打席の2ランについて「(打球方向は)あまり見ていませんでした。風で戻ってくると思っていたので。そしたら…。入っていました」とケロリとした表情で答えた。

 対外試合での通算打率は5割をオーバー。しかも快音の大半は長打だ。「この先、プロでもやっていけるような自信のようなものは湧いてきましたか?」と問われると、言葉短かに「やっていくしかないんで。はい」。自分にそう言い聞かすように答えた。