【グレイシーハンターの〝真実〟 IQレスラー桜庭和志 実録 桜道(32)】2006年5月3日、国立代々木競技場第一体育館大会にいました。3月いっぱいで高田道場を辞めてフリーとなり、PRIDEから移籍。そのあいさつを移籍先の「HERO’S」のリング上でするためでした。素顔で行くのもなんだかなあ…、ひとひねり欲しいなあ…という感じだったので、タイガーマスクをかぶってリングイン。その後、8月5日の有明コロシアム大会でケスタティス・スミルノヴァス(リトアニア)と対戦することが決まりました。

前田日明氏(右)、谷川貞治氏(左)とともにHERO’S参戦を発表(06年5月)
前田日明氏(右)、谷川貞治氏(左)とともにHERO’S参戦を発表(06年5月)

 この試合で印象深かったのは…、試合前にセコンドの豊永稔から「速攻が来るから気を付けてください!」ってしきりに言われたことです。それで気を付けていたら試合が始まっても全然来なかったんです。それで「速攻、来ないじゃん」って思ってたらパンチをもらって一瞬飛んだけど、レフェリーに「止めんじゃねえぞ、コノヤロー!」って言ったんです。

 試合が進んでから何度もタックルをピンポイントで決めたのに全然倒れないんですよ。「なんでこいつ倒れねえんだ。めっちゃ腰が重いじゃん」って…。後で映像を見たらロープをつかんでたんです。僕からは見えないんだから、セコンドがレフェリーに言わないとダメだろ!って話ですよ。それでも最後にやっとタックルで倒したら、豊永が「殴れ、殴れ」って言うんです。それで〝いやー、今は殴る場面じゃねえだろー〟ってことで普通に腕十字を取って(1ラウンド6分41秒で)勝つことができました。

スミルノヴァスに腕十字を決めた桜庭(06年8月)
スミルノヴァスに腕十字を決めた桜庭(06年8月)

 この試合は「ライトヘビー級世界最強王者決定トーナメント」の1回戦として行われていました。勝てば10月9日に横浜で行われる決勝トーナメントに進出することになっていたんです。でもこの時、僕はもう37歳でしたから…。試合前には「トーナメントなんて出ません。無理です」っていう話をしていたんです。それでも「頼むよー」みたいな感じで言われて出ることになったんですよね。

 そしたら、この試合後に医師から「椎骨脳底動脈血流不全の疑い」って診断されたんです。長年にわたる首へのダメージの蓄積が原因とのことでした。とはいえ、椎骨脳底動脈血流不全と断定されたわけではなく、あくまで「疑い」でしたけど。それで診断書が出されて、10月の準決勝は大事を取って欠場することになりました。

 この準決勝で対戦する予定だったのが秋山成勲でした。彼は準決勝で僕の代わりに出場したスミルノヴァスと対戦してKO勝ちすると、続いて行われた決勝でメルヴィン・マヌーフ(オランダ)に腕十字で勝って優勝。その試合後に、彼から要求されて大みそかに対戦することが決定して、あの〝事件〟が起きることになります。

 

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