池山隆寛監督(60)率いる新生ヤクルトは開幕4カードを終え、8勝3敗で首位の座をキープ。9日の阪神戦(甲子園)では0―2の降雨コールド負けを喫したが、セ・最下位予想が圧倒的だった周囲の下馬評を覆す健闘ぶりを披露している。名将・野村克也氏の懐刀として1990年代黄金期ヤクルトの打撃コーチを務めた本紙評論家の伊勢孝夫氏は、新指揮官の用兵を「ノムさん譲りの弱者の兵法やな」と指摘した上で〝お調子者のススメ〟を説いた――。

【新IDアナライザー・伊勢孝夫】11試合を消化したが、チーム全体でマークした犠打はたったの「1」。ずいぶんと極端な戦い方になっているけど岩田、増田、伊藤と足を使える選手がスタメンに名を連ねているからこそ通用する芸当やな。〝各駅停車〟にならない走塁に自信があるから、犠打による余計なアウトカウントを相手バッテリーに献上するコストを省ける。池山なりの根拠があっての采配やな。〝弱者の兵法〟を得意としたノムさんの影響もあると思うよ。

 この日、捕手としてスタメン起用されていた高卒3年目の鈴木叶も落ち着いたええリードをしていたな。ムーチョ(中村悠)からいろいろ教えてもらってるんやろ。新守護神・キハダを筆頭にブルペンが安定しているからこそ接戦を勝ち抜くこともできている。開幕ダッシュ成功に一番驚いているのは、他ならぬ池山とちゃうか?(笑い)

 阪神相手に1勝2敗で首位の座をキープなら御の字やろ。戦前の戦力評価は12球団最弱レベル。対戦球団からのマークが緩かったことや、山田、内山ら負傷離脱者の多さゆえに、データの少ない若手を起用してることも吉と出ている側面があると思う。でも今はそれでええんよ。そういう中でいい意味で〝勘違い〟をした若手がいつの間にか主力へと育ち、覚醒を迎える――。「下馬評が低い年のヤクルトは強い」ってジンクスの背景には、そんなチームの伝統もあるんよな。

 昔からヤクルトはお調子者の集団や。古田、広沢、飯田…。その中でも当時のお調子者の代表格は池山よ(笑い)。ノムさんもそんな彼らの機嫌を損なわないように、結構気を遣ってたわ。そういうところもせっかく監督になったんやから見習ってほしいな。

 お調子者集団だからこそ「5連勝のあとに8連敗」みたいな失速パターンも多い。俺だって「今年のヤクルトの強さは本物や」みたいな無責任な評論は現時点ではできないよ。セ・リーグの阪神優位は揺るがない。でもヤクルトのお調子者たちがイケイケの〝勘違い野球〟を続けてくれれば、ペナントレースの展開は間違いなく面白くなるよ。

(本紙評論家)