かつて横浜に一度も姿を見せなかった〝幻の助っ人〟が、今夏のトレード市場の主役候補に躍り出た。

 今季序盤の大失速から一転、ナ・リーグ東地区の優勝争いへ舞い戻ったフィリーズが、ダイヤモンドバックスのルルデス・グリエル・ジュニア外野手(32)を獲得候補に加えた模様だ。米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」が13日(日本時間同日)、米全国紙「USAトゥデー」のボブ・ナイチンゲール記者の情報を引用し報じた。

 フィリーズは開幕から9勝19敗とつまずき、一時は借金10まで沈んだ。それでも5月以降は急激な勢いで巻き返し、6月末までに貯金10へ到達。12日時点で地区首位ブレーブスに2ゲーム差まで迫り、トレード期限の米東部時間8月3日午後6時(同4日午前7時)を前に明確な「買い手」へ変貌した。

 補強の最優先課題は右打ちの外野手だ。すでにオリオールズのウォードらに照準を合わせる中、新たに浮上したのがグリエルだった。日本球界にとっても因縁浅からぬ存在だ。

 2015年2月、前年にDeNAで62試合に出場し、打率3割5厘、11本塁打、30打点を残した兄ユリエスキ・グリエル内野手(42=FA)とともに横浜DeNA入りで合意。背番号91も決まっていたが、左手首痛を理由に来日せず、制限選手となった末に一度もプレーしないまま退団した。翌16年2月には兄とともにドミニカ共和国でキューバ代表から離脱して亡命。同年11月にブルージェイズと契約し、18年にMLBデビューを果たした。

昨季はパドレスに所属した兄のユリエスキ・グリエル(ロイター)
昨季はパドレスに所属した兄のユリエスキ・グリエル(ロイター)

 その後は強打の右打者として定着。ダイヤモンドバックス移籍1年目の23年には自己最多の24本塁打、82打点をマークして初の球宴に選出され、ワールドシリーズ進出にも貢献した。外野守備でも同年は8補殺、守備防御点14を記録。昨季も右ヒザ前十字靱帯断裂で9月に離脱するまで19本塁打、80打点を挙げた。

 今季は4月18日(同19日)に復帰して以降、打率2割1分1厘、2本塁打、20打点、OPS0・551と低迷している。ただ、左投手に対する通算成績は打率2割9分4厘、出塁率3割3分7厘、長打率4割7分。左腕攻略に苦しむフィリーズにとって、実績十分の〝左キラー〟を比較的少ない交換要員で引き入れられる好機でもある。

 一方のダイヤモンドバックスは49勝47敗で、球宴休止前にはドジャースを3連戦で一掃した。売り手に回る保証はなく、交渉成立には今後の星勘定が大きく影響する。それでも世界一を狙うフィリーズが、ウォードに続いてグリエルまでリストアップした事実は本気度の表れだろう。