ヤンキースが開幕直前に打った一手は、派手さとは無縁だった。だが、だからこそ不気味でもある。米メディア「トータル・プロ・スポーツ」が取り上げたのは、ナショナルズから獲得した右腕ショーン・ポール・リニャン投手(21)だ。ホルビド・ビバス内野手(25)を放出し、21歳新鋭を引き入れた22日(日本時間23日)のトレードは、オフの〝物足りなさ〟を引きずる名門にとって、ただの人員整理では終わらない可能性を秘めている。
今のヤンキースは先発陣に不安を抱える。ゲリット・コール投手(35)、カルロス・ロドン投手(33)の調整は不透明で、ルイス・ヒル投手(27)にも安定感という意味ではなお課題が残る。そうした中で補強されたリニャンは、いわば「無名の保険」ではない。むしろ、投手育成に定評のある球団が素材に賭けた一手とみるべきだろう。
リニャンはコロンビア出身の右腕で、もともとはドジャースと契約した国際FA。昨季途中にナショナルズ傘下へ移るなど3球団を渡り歩き、メジャー経験はないもののマイナー4階級で計19試合、77回1/3を投げて防御率3・03、106奪三振を記録した。数字でまず目を引くのは、やはり奪三振率の高さだ。MLB公式の有望株情報でも最大の武器はチェンジアップとされ、ヤンキース傘下では早くも注目株に位置づけられている。
もちろん、いきなりローテの救世主と決めつけるのは早計。だが、開幕前のヤンキースにいま必要なのは、完成品よりも空気を換える「不確定要素」かもしれない。静かな補強ばかりで、どこか迫力不足が拭えなかった今オフ。その終盤で滑り込んできた〝謎の右腕〟が、停滞感を破る火種になるのか。名門球団の春は、案外こういう無名株から動き出すかもしれない。












