ヤンキースのアーロン・ブーン監督(53)が口にした「うちはア・リーグ東地区で最も分析力が低いかもしれない」という一言が、米球界で波紋を広げている。もっとも、これは球団の分析体制が貧弱だと嘆いた話ではない。むしろ焦点は、数字を握った上でなお最後に現場がどう裁くか――。その「距離感」にある。
米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」によれば、ブーン監督は同じア・リーグ東地区のジョン・シュナイダー監督(45=ブルージェイズ)、アレックス・コーラ監督(50=レッドソックス)、ケビン・キャッシュ監督(48=レイズ)らに比べ、試合中の意思決定でアナリティクス(データ分析)へ寄り切ってはいないと半ば自虐的とも思える認識を示した。
実際にヤンキースは今春、ランダル・グリチック外野手(34)をマイナー契約で加えるなど左腕対策の厚みは増したが、球団内部では高速カメラやトラックマンを駆使し、マット・ブレイク投手コーチ(40)が投球データをベンチへ還元する体制がすでに根付いている。
つまりヤンキースは「分析しないチーム」ではない。ブライアン・キャッシュマンGM(58)やハル・スタインブレナー・オーナー(56)が資金を投じて得た情報を、現場が〝絶対視しない〟だけだ。そこにあるのは反アナリティクス(データ分析偏重)ではなく、数字だけでは拾い切れない試合の空気や投手の勢いをどう救い上げるかという発想だろう。昨季ポストシーズンの短期決戦でもデータ上は早めの継投が妥当に見える場面で、あえて続投を選んで流れをつかんだケースが象徴的だった。
昨季94勝でブルージェイズと並んだ強豪地区の現実を見ても、問われているのは分析の量ではなく、数字と直感をどう配合するかという監督の胆力だ。ブーン監督の発言は自己弁護でも弱音でもない。ベンチがフロントの操り人形では終われない――。名門ヤンキースの矜持(きょうじ)が、あの一言にはにじんでいた。












