今オフのメジャーリーグ移籍市場で異彩を放っているのが、ブルージェイズだ。日本の主砲・岡本和真内野手(29=前巨人)の獲得のみならず、屈強右腕ディラン・シース投手(30=前パドレス)ら先発投手陣を次々と補強。市場では「台風の目」と評されている。視線の先にあるのは、昨季ワールドシリーズで敗れたドジャース、その象徴である大谷翔平投手(31)に再び頂上決戦でリベンジを果たすこと。「打倒ドジャース&大谷」を合言葉に〝東の帝国〟構築へと突き進んでいる。
ブルージェイズの今オフの動きは、明確な意思を帯びている。まず象徴的だったのが、巨人からポスティングシステムを利用して獲得した岡本だ。一塁、三塁、外野も守れるユーティリティー性と、三振が少ない長距離砲である両面を高く評価。攻守両面の戦力強化に加え、日本市場へのアピールも念頭に置きつつ、日本の伝統球団・巨人で4番を張った岡本と年俸4年総額6000万ドル(約94億円)の大型契約を締結した。
投手陣でも手綱を緩めていない。先発の柱として昨季まで5年56勝をマークした超大物シースを確保。さらにかつて日本ハム、楽天でもプレーし、昨季は韓国KBOのハンファで17勝1敗、防御率1.89、252奪三振と圧倒的な成績でリーグMVPに輝いた右腕のコディ・ポンセ投手(31)を加えるなど、今季のポストシーズン進出は無論、1993年以来33年ぶりとなるワールドシリーズ制覇を見据えた布陣づくりを進めている。昨年のワールドシリーズでドジャースと激突し、第7戦までもつれ込みながら頂点を逃した経験が、この積極性の原動力になっているのは明らかだ。
補強はまだ終わらない。フロントが次に照準を合わせているのは、強打者の野手だ。ボー・ビシェット内野手(27=ブルージェイズFA)との残留交渉については複数の現地メディアから「撤退モード」とも伝えられる中、市場ではカイル・タッカー外野手(28=カブスFA)、そしてコディ・ベリンジャー外野手(30=ヤンキースFA)の名前が具体的なターゲットとして取り沙汰されている。いずれも中軸を担える実績十分の打者で、どちらか1人でも加われば、ブルージェイズ打線はリーグ屈指の破壊力を手にする。
仮に高額な長期契約で折り合わない場合でも、ブルージェイズは立ち止まらない。FA市場に固執せず、トレード市場も視野に入れた柔軟な戦略を描いている点が、今オフの特徴だ。潤沢な資金力を背景にあらゆる選択肢を並行して検討する今オフのブルージェイズの姿勢には、米スポーツ専門局「ESPN」が「近年のドジャースを想起させる」と分析する意見も出ている。
さらに興味深いのが、日本市場への継続的な関心である。将来的なMLB挑戦が濃厚とされている日本ハムの伊藤大海投手(28)、阪神の佐藤輝明内野手(26)に対しても、複数のMLB関係者の間で「早々とブルージェイズが水面下で調査を進めている」との情報が流れている。単なる話題づくりではなく、長期的な戦力計画と市場価値の双方を見据えた動きとみられる。
こうした一連の補強の背景にあるのが、ドジャースへの強烈な対抗心だ。2年前、ブルージェイズは23年オフに当時エンゼルスからFAとなった大谷争奪戦に参戦しながら、最終的にドジャースに敗れた。その雪辱を果たすかのように前出の「ESPN」も、そんなブルージェイズのスタンスを「今オフは真逆の立場から市場を主導している」と論じている。「西の帝国」ドジャースに対し、「東の帝国」として君臨する――そんな野心が、編成の随所ににじむ。
世界一への最短距離を選び続けるブルージェイズ。怒涛の補強の先に描くのは2年連続のワールドシリーズ進出、そして因縁の相手との再戦だ。打倒・大谷、打倒・ドジャース――。その旗印が、今オフの市場をここまで熱くしている。












