ついに全面解放だ。巨人からブルージェイズに移籍した岡本和真内野手(29)が、新たな野球人生を歩み始めている。11年間在籍した巨人では伝統球団の主力として重圧と責任を一身に背負ってきたが、今後はその必要はない。野球最高峰の舞台で夢だけでなく、なんとなく破ってきた巨人の不文律も膨らませ放題となりそうだ。

現地での入団会見で笑顔を見せた岡本和真(ロイター)
現地での入団会見で笑顔を見せた岡本和真(ロイター)

 年明けに吉報が舞い込んだ岡本は、すでにカナダ・トロントで入団会見、帰国後には都内で事実上の退団会見を済ませた。

 球団に夢を後押しされ、勝ち取った契約は4年総額6000万ドル(約94億円)。昨季の推定年俸5億4000万円から単年ベースで23億5000万円への大幅アップとなったが、岡本は金額以上に「やる前から『できる、できない』なんて分からない。自分を信じて絶対打ちたい」と新たな挑戦に燃えている。

 巨人時代は不動の4番に座り、チームの勝敗への責任を一身に背負ってきた。プレー中は喜怒哀楽を出さず、内面を読み取りづらいキャラクターだったが、勝利には貪欲。まれに〝紳士球団〟らしからぬ言葉も口走り、ベンチ裏で暴れたこともあった。

 そうした言動は中心選手としての責任感から極力控えてきたが、これからは伝統球団のルールに縛られることもない。その一つが「ガム」だ。

 巨人では長らくプレー中にガムを噛むことを禁止されてきた。現在では「集中力が増す」などの理由で試合中にかんでいる選手もいるが、歓迎する声ばかりではない。球団OBの堀内恒夫氏(77)が、昨年8月に自身のブログで「若い選手に言いたいよ。ベテランみたいにガムをクチャクチャ噛みながらバッターボックスに立ってる場合じゃないよってね」と苦言を呈したこともあった。

きっかけは2023年のWBCだった
きっかけは2023年のWBCだった

 しかし〝NG行為〟を真っ先に取り入れたのが岡本だったことはあまり知られていない。ガムを噛み始めたのは2023年シーズンから。しかも当時は主将の立場だった。理由を直撃したところ、本人は「あんまり口を動かさないようにしないと。バレんように」とモゴモゴしていたが、試合の中継映像でも思いっ切り抜かれ、口に含んだガムそのものが露出したことも…。隠そうとする思いとは裏腹に、残念ながら「公然の秘密」と化していた。

 だが、真面目な理由もある。それが同年の開幕前に開催され、自らも世界一メンバーとなったWBCだった。

「そしゃくする時に緊張が和らぐらしいんですよ。それぐらい緊張しました」

 普段の試合ではひょうひょうとしていても、日の丸を背負った戦いで感じた重圧はやはり別格。足が震えるような緊張に襲われた中〝ガム効果〟もあって、米国代表との決勝戦では貴重なソロアーチも放った。そのままなし崩し的にシーズンになだれ込んだのだった。

 もう人目を気にする必要はない。メジャーリーガーがガムを噛むことは日常の光景だ。自身を育ててくれた巨人への感謝を忘れることはないが、さまざまな制約から解き放たれる和製大砲はどんな大爆発を見せるのか。

風船ガムを膨らませる巨人・クロマティ(1985年)
風船ガムを膨らませる巨人・クロマティ(1985年)

【クロマティもガム愛好家】巨人でガムといえば、1980年代に大活躍した〝最強助っ人〟クロマティが有名だ。たまに膨らませすぎて破裂してしまうこともあったが、明るいキャラクターも相まってファンの間ではセットで認知されていた。MLBではヤンキースのブーン監督が、口の数倍の大きさの風船を膨らませることがある。また、パドレスの〝暴れん坊〟マチャドは2024年のドジャースとの地区シリーズ第5戦で、大谷の三飛を風船を作りながら捕球し、SNS上で「さすが悪童」「メジャーはすごい」などと話題になった。