球史を揺らす無失点街道が、サイ・ヤング賞レースの景色まで塗り替えつつある。フィリーズのクリストファー・サンチェス投手(29)が、ナ・リーグの主役に躍り出た。
米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」は、5月27日(日本時間28日)の敵地パドレス戦で7回6安打無失点、9奪三振と快投したサンチェスの数字をクローズアップ。これで連続無失点は44回2/3に伸び、1911年にグローバー・クリーブランド・アレクサンダーが築いたフィリーズ球団記録の41回を115年ぶりに塗り替えた。88年のオーレル・ハーシュハイザーによるメジャー記録59回も、もはや遠い神話ではなく視界に入っている。次回登板は3日(同4日)の本拠地パドレス戦に予定されている。歴史的快投の余韻が残る中、サンチェスは再び無失点記録を伸ばすマウンドに上がる。
一方で、ここまでの記録そのものはすでに広く伝えられている。だが本当に異様なのは、その中身だ。サンチェスは5月の5登板で39回を投げ、失点はゼロ。許した安打は25本、四球はわずか3個。7回以上無失点の先発登板を5試合連続で記録したのは、現代野球でサンチェスただ1人だという。5月1日以降の防御率0・00はもちろんメジャー最高。守備や運に左右されにくい投球内容を示すFIPでも1・06で、ジェイコブ・ミシオロウスキー(24)投手に次ぐ全体2位。四球率2・1%はメジャー最高で、奪三振率も31・5%に達する。単なる「無失点の勢い」ではなく、三振を奪い、歩かせず、内容面でも打者を封じ込めている。
今季全体でも、サンチェスは12試合に登板して6勝2敗、防御率1・47、79回1/3、95奪三振、WHIP1・12。防御率と投球回でメジャー最高水準に立ち、fWAR3・3は投手全体トップだ。ブルワーズの「怪物」ミジオロウスキーは6勝2敗、防御率1・65、108奪三振、WHIP0・79と猛烈に追い上げているが、現時点の先頭を走るのはサンチェスと見ていい。
もちろん、ドジャースの大谷翔平投手(31)も圧巻だ。9試合で5勝2敗、防御率0・82、55回、61奪三振という数字は、二刀流の枠を超えた破壊力を示している。それでも投球回、連続無失点、総合指標、そして5月を完全に支配した密度を並べれば、今のサイ・ヤング賞戦線ではサンチェスの存在感が一段上にある。歴史的記録は入り口にすぎない。フィリーズの29歳が今、ナ・リーグ最高投手の座を力ずくで奪いにいっている。












