「踊る側」から「伝える側」へ――。福岡・タマスタ筑後でスタジアムDJとして球場を盛り上げる杉山奈々さん。2023、24年はホークスの「ハニーズ」として活動し、昨季からは「DJ奈々」としてファンとの一体感を生み出している。独立リーグ、巨人、ソフトバンクと歩んできた表現者が、新たな夢へ歩みを進めている。
今はマイクを握るその手で、かつては踊っていた。DJ奈々さんは子供の頃から体を動かすことが大好きで、学級委員や合唱祭の指揮者を務める活発な子供だった。「今思えば目立ちたがり屋だったのかもしれません」と笑う。
人前に立つ楽しさを知ったのは高校時代だった。女子校の学校行事をきっかけにダンスと出会い、高校2年からダンススクールへ通い始めた。当時憧れたのは福島を拠点に活動していたダンサー、振付師のRuuだった。「ただ踊るだけでなく、見る人を引きつける表現力に感銘を受けました」。エンターテインメントとして届ける姿に自身の理想を重ねた。
高校卒業後は芸能系専門学校でダンスを学び、独立リーグの栃木ゴールデンブレーブスでチアとして活動。その後、巨人の公式マスコットガール「ヴィーナス」に加入した。転機は2022年冬だった。ヴィーナスの同期で、ハニーズ出身のメンバーから活動の話を聞くうちに「自分のやりたいチアの形はハニーズにある」と感じた。より高いレベルのパフォーマンスを求め、地元・埼玉を離れて福岡行きを決断。「両親が慌ただしく準備をしてくれました」と感謝する。
ハニーズ時代に印象に残っているのは、他球団で活動する仲間たちとの再会だった。「それぞれ成長した姿で会えた時は本当に感動しました」。同じ夢を追い続けた仲間の存在は今も大きい。そして転身のきっかけとなったのがマイクだった。話す機会が増えるうちに、伝える仕事への興味が強くなった。当時はスタジアムDJ退任後にハニーズが交代でマイクを担当していた時期で「専属の担当が必要なら自分がやりたいと思いました」と自ら志願。踊る側から伝える側へ、新たな挑戦が始まった。
現在はタマスタ筑後で試合前イベントやイニング間の盛り上げを担当する。「お客さんとのコミュニケーションを取りながら、一体感をつくれるのが楽しいんです」とやりがいを語る一方、「試合や食事を楽しむファンの方にどうすれば耳を傾けてもらえるのか。強弱や緩急をつけながら届けることを今も勉強しています」と難しさも口にする。
現在注目している選手はドラフト5位ルーキーの高橋隆慶内野手だ。「1年目から結果を残していますし、今後が本当に楽しみな選手です」と期待を寄せる。一方、ハニーズ時代に印象に残った選手として挙げたのは栗原陵矢内野手だった。試合前イベント「オンユアマークス」で子供たちと目線を合わせながら優しく接する姿が印象的だったといい、「すごくすてきな選手だなと思いました」と振り返った。
今年でタマスタ筑後は開業10周年を迎えた。「地域の皆さんに愛されてきた10年なんだと感じます」。その節目にスタジアムDJとして関われることを光栄に思っている。将来の目標はテレビやラジオでも活躍するMCになること。「タマスタでの経験を生かして活動の幅を広げていきたい」と目を輝かせる。
「若鷹たちの成長を間近で見守れるのはタマスタならではの魅力です」。未来のスター候補たちを見守る鷹ファンとともに、今日もDJ奈々さんはマイクを握る。














