負けが込む夜に、甲子園で一番しぶとく光ったのは、白星ではなくベテランの意地だった。阪神は4日の西武戦(甲子園)に2―4で敗れ、3連敗を喫した。昨季まで3年連続で負け越している交流戦は今季も2勝6敗と泥沼ムード。セ2位の座こそ守ったが、3位・巨人には1ゲーム差まで迫られ、首位・ヤクルトとの差を縮めることもできなかった。

 藤川監督は試合後「また明日切り替えてやっていかなきゃいけない」と前を向いたが、虎党の胸中は穏やかではない。それでも、この夜の甲子園に拍手を呼び込んだのが西勇輝投手(35)だった。通算1500奪三振まで残り3で迎えたマウンド。初回にカナリオを空振り三振に仕留めると、2回には平良を見逃し三振。3回先頭のカナリオから再び三振を奪い、NPB史上61人目の大台に到達した。

 剛球で押しつぶすタイプではない。球速表示で客席をどよめかせるわけでもない。それでも18年目の右腕は、配球、間合い、制球、駆け引きでプロの荒波を泳ぎ続けてきた。記念ボードを掲げ、一塁ベンチ前でスタンドへ一礼した姿には、勝敗とは別の重みがあった。西は「ファームにいる選手や他球団の選手が、〝西さんみたいな生き方もできるんだ〟という一つの指針になったんじゃないかな」と静かに胸を張った。

 この節目を最も近くで受け止めたのが、昨オフにトレードで加入した伏見寅威捕手(36)だ。オリックス時代にもバッテリーを組んだ旧知の仲。しかも同学年。昨季、わずか1試合の登板に終わった西の苦しみも知る伏見は「去年はあんだけ投げられなくなって、もう年齢的にもダメかなって思ったんじゃないかなと。僕も気持ちはすごくわかるんで」と思いを代弁した。

 ただ、そこで終わらないのがこの2人だ。伏見は「まだまだ年齢とかで見ないで、〝このプロ野球界でできるんだぞ〟っていう思いで僕もやってますし、西もその思いでやってほしい。2人であがきながら、らしさを出していけたら」と力を込めた。

 チームは沈み、交流戦の傷口は広がっている。だが、虎の〝イケオジバッテリー〟まで老け込むつもりはさらさらない。白星を逃した夜に刻まれた1500奪三振は、崖っぷちの猛虎に残された「しぶとさの証明」でもある。