この男がいなければ日本一はおろか、リーグ優勝にも届かなかったかもしれない。ディフェンス面の〝陰のMVP〟といえるのが8年目の阪神・坂本誠志郎捕手(29)だ。

 今季から指揮を執った岡田監督は、開幕前に正捕手として梅野隆太郎捕手(32)の起用を明言。坂本の出番は村上、大竹の先発時が中心で起用は限定的だった。だが、梅野が8月13日のヤクルト戦で左手首を骨折。今季中の復帰が絶望となると、主に梅野がコンビを組んできた伊藤将、西勇、青柳、才木の主要先発陣も引き継ぎ、リーグVを加速させた。

 最終的に公式戦76試合でスタメンマスクをかぶり、バッテリーを組んだのは計11人。坂本が先発した際の先発投手に勝敗がついたケースでは37勝16敗だ。「21」もの貯金を稼ぎ、日本シリーズもほぼ1人で投手陣をけん引した。

日本一の瞬間、子供のような表情で岩崎(手前)に飛び掛かる阪神・坂本
日本一の瞬間、子供のような表情で岩崎(手前)に飛び掛かる阪神・坂本

 嶋田バッテリーコーチは「とにかく研究熱心。梅野がマスクをかぶっている時から『俺ならこうする』というのを常にベンチで頭を動かしていたからこそ。いろんな準備を出ていない試合の中でも、自分なりにできていたからこそ、すんなりゲームに入れたのだと思います」と絶賛する。

 さらに「ピッチャーの今日のいい球、これは今日はヤバいかなというのがあると思うんだけど、それを見抜く力も。『ここは〇〇(球種)で内角に入れたほうがいいかも…』とか」と洞察力の高さをたたえた。

 こうした能力は捕手にとって不可欠なもの。その力はすでに球界トップクラスとの評価もあり、セ球団関係者をして「今年の阪神には、侍ジャパン級の捕手が(梅野と合わせ)2人いた」と言わしめている。シーズン後半から大きな存在感を放った坂本は、38年ぶりの日本一奪回に間違いなく欠かせないピースだった。