眠っていた左腕の野望が、ようやく神宮のマウンドで目を覚ました。首位・ヤクルトは3日のロッテ戦(神宮)に1―0で競り勝ち、2位・阪神とのゲーム差を1・5に広げた。主役は今季初勝利をつかんだ高橋奎二投手(29)だ。ここまで3度登板して未勝利だった左腕は、強力なロッテ打線を相手に7回2安打無失点、無四死球。二塁すら踏ませない快投で、ようやく本来の姿を取り戻した。

 相手先発・毛利との投げ合いで5回までゼロ行進。だが、0―0の6回、増田が2番手・高野の外角高め直球を左翼席へ運ぶ4号ソロを放ち、均衡を破った。星、キハダも無失点でつなぎ、1点を守り切った。

 試合後、高橋は「向こうもすごいテンポで投げていて、それにつられてしっかり投げることができた。3試合目ですけど1勝できたのでよかった。しっかり流れに乗っていければ」と安どした。

 だが、この1勝は単なる白星ではない。高橋には、かねて球団に伝えている将来的なMLB挑戦という夢がある。しかも、元同僚の村上宗隆内野手(26)は今季からホワイトソックスへ渡り、右ハムストリングの故障で負傷者リスト(IL)入りしたとはいえ、メジャー1年目から存在感を示している。その姿が、高橋の胸の奥に残る「海の向こう」への火を消させない。

 150キロ超の直球にカーブ、チェンジアップを織り交ぜる投球術。好不調の波はあるが、日本人左腕はMLBでもなお希少価値が高い。エンゼルス・菊池、カブス・今永らが道を切り開く中、2023年3月開催の第5回WBCで侍ジャパンの一員として世界一に貢献した実績もある。今年3月の第6回大会ではメンバー入りを逃したが、国際舞台を経験した左腕へのチェックは複数のMLB球団も継続中で決して途切れていない。

「やっぱり悔しい気持ちがあった、準備していく段階が苦しかった」。出遅れた時間を燃料に変えた背番号47。神宮での初白星は、はっきりとメジャー夢物語の再始動を告げる号砲にも見えた。