天のミスターが味方したのか、それとも〝ミスターパワー〟が降臨したのか――。そんな声が飛び交っても不思議ではないほどの劇的勝利だった。巨人は3日のオリックス戦(東京ドーム)に5―4で逆転勝ちし、連勝を飾った。この日は終身名誉監督・故長嶋茂雄氏(享年89)の一周忌特別試合。球団の象徴へ、どうしても白星を届けなければならない一戦でようやく花向けの勝利をつかみ取った。その舞台裏では生前の同氏が好んでいた「ミラクル」への予兆も沸き起こっていた。
序盤から流れは最悪だった。先発の戸郷が2回途中に危険球で退場する緊急事態。打線もオリックス先発・曽谷の前に6回まで無得点に封じ込められ、試合は完全に劣勢ムードに包まれた。1―4で迎えた8回も、普通ならそのまま沈んでもおかしくない展開だった。
だが、ここから長嶋氏がかつて口にし続けていた「野球は筋書きのないドラマ」が幕を開ける。一死から3連打で満塁機をつくると、代打・丸佳浩外野手(37)が相手2番手・椋木から右翼席へ2号逆転満塁弾。沈黙、劣勢、土壇場、そして一振りで形勢逆転。これ以上ないほど〝ミスター好み〟のミラクル弾だった。最後は守護神マルティネスが1点差を守り切り、巨人が特別な一夜を白星で締めた。
橋上秀樹監督代行(60)は「長嶋さんがよくおっしゃっていたドラマですよね。なかなかこんなドラマは書きづらいなという感じでしたけれども、本当にいい形で今日という日に勝つことができてホッとしましたし、良かったなと思います」と胸をなで下ろした。殊勲の丸も「長嶋さんが打たせてくれた本塁打だと僕は信じていますので、本当に感謝したい」と天国の恩師に頭を下げた。
巨人にとって、この勝利は単なる1勝ではない。長嶋終身名誉監督が亡くなって初めて迎えた昨年6月4日のロッテ戦は3―5で敗戦。追悼試合として行われた同8月16日の阪神戦も0―3で完敗し、球団の顔をしのぶ試合で屈辱を重ねていた。
それだけに、この日は試合前から空気が違った。チーム関係者が「理屈は抜きにして、長嶋さんを冠した試合でこれ以上の負けはメンツが立たない」と言えば、選手の一人も「今日は何が何でも勝たないといけない試合だというのは、みんなどこかで感じていると思う」。普段は冷静な橋上監督代行でさえ「昨年がちょっとふがいない試合になってしまったので、今年は何とか恥ずかしくない試合をしようと思っていました」と特別な思いを明かした。
またも沈黙に終われば、さすがに格好がつかなかった。だが、土壇場で待っていたのは屈辱の上塗りではなく、天国のミスターへ届ける劇的勝利。1年越しの雪辱を果たした巨人に、この〝長嶋さんの1勝〟が強烈な追い風となりそうな予感も漂う。












