【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】WBCに出場する侍ジャパンの阪神・湯浅京己投手(23)に日本代表の先輩から熱いエールが届いた。送り主はNPB入り前に所属していた独立リーグBC富山で監督だったヤクルト・伊藤智仁投手コーチ(52)。1992年バルセロナ五輪で3試合、計18回を投げて27奪三振というギネス記録を打ち立てたレジェンドだ。
「僕らの時代は日本代表といっても選手がアマチュアだったから」と謙遜しつつも、愛弟子に贈った言葉にはリアリティーがあふれていた。
「五輪やWBCのような国際試合は、同じ打者との対戦機会が少ないからね。ほぼ初見の状態で対戦するのであれば、あのストレートとフォークはそう簡単には打たれへんと思う。ボール(WBC球)への対応はあるとは思うけど。自分のストロングポイントをどんどん出していってほしいね」
伊藤コーチは現役時代150キロ超の直球と、高速スライダーで名をはせた。現在でもユーチューブなどでは当時の動画が多くアップされており、相当な再生回数を誇っている。ネット上で〝神スライダー〟と称される曲がり幅は語り草だ。
WBCを前に湯浅がその〝伝家の宝刀〟習得を目指しているということも伊藤コーチは知っている。だが、「そんなんできへんよ。やめとき。投げ方も、腕の振り(の軌道)も違うし。リップサービスもあるんじゃないの」と笑い飛ばす。
何も意地悪で言っているわけではない。「僕のようなスライダーなんか投げなくてもいい。湯浅には僕よりすごいストレートとフォークがあるんやから。そのストロングポイントをぶつけていけばいい」。自分の武器で勝負してこい――発した言葉に熱量を感じた。
取材の最後に伊藤コーチは「どんな場面、役割で投げるのか。厳しい場面もあるかな。でももし打たれたとしても、起用した投手コーチの責任やと思って投げればいい。そう、全部(ヤクルト時代の先輩で代表コーチの)吉井さんのせいにしといたらええねん。それぐらいの気持ちでいけばいいよ」とオチをつけた。
京都出身とあって関西弁を織り交ぜたトークはユーモア満点。ただ、それ以上に言葉の端々に教え子への愛情がにじみ出ていた。
日の丸を胸に戦うことの重圧。その現実を知る恩師からのエールは、湯浅の心に刺さるに違いない。
☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。












