【グラゼニ球論・金村暁】阪神の投手陣で唯一、WBC球を使用して調整に励む湯浅京己投手(23)。7日のブルペンでは直球、カーブ、スライダーを交えて35球。球数的にはすでに代表でのリリーフ登板を想定した調整に励んでいる模様でしたが、投球を見て「まだ少し不安だな」というのが、率直な感想です。
もちろん、本人もこの感覚を自覚していました。彼の持ち味は何といっても、角度がついた軌道で低めに球威ある直球を集められること。「滑りやすい」とされるWBC球への適応は、代表入りが内定した昨年末から着手し、いろいろと試行錯誤しているのは聞いています。
ですが、まだ昨年のようなしっかりスピンのかかったボールがコンスタントに投げ切れているところまではいっていません。このクールでも、少し話を聞くことができましたが、やはりNPB球とは勝手が違うとのこと。具体的にはNPB球と比べWBC球は、右手で持った感じも大きく、縫い目の高さはそこまで感じないまでも、縫い目自体の面積が大きく感じるとのことでした。指先に伝わる繊細な部分でのそんな〝違い〟が、まだピッチングにも出てしまっているなと感じました。
捕手の後ろから投球を見た時も、わずかですが変化がありました。投手は本塁へと体重移動しながら、上半身はテークバックをつくりますが、湯浅がいい時は、右手が力感のない自然な形で軸足付近へと下りて、そこからトップへと再び上がっていきます。ですが、この日はテークバックに入るために落とした右手が、見た目にも、力が入ってしまっているように感じました。
これは本人も口にしていた「NPB球より大きさを感じる」ゆえの現象かと思います。ボールをグリップしようとする意識がまだ強いため、無意識に右手に余分な力が入っているためです。
WBCへ向け、投球メカニクスの細部まで完成できたかといえば「まだまだ」なのが現状。逆に言えば、このあたりが改善されれば一気に直球の軌道も安定し、変化球の引っかけや抜け球の心配も解消されるはずです。
17日からの代表合宿では、湯浅と同じくWBC球への適応に試行錯誤を続けた投手たちと、情報交換できるのもいい機会になると思います。
まだ59試合で43ホールドを挙げた、昨年のような球質ではありません。本番までの時間は、まだ十分にあります。その間に自分に合った感覚を身につけさえすれば、すぐに湯浅本来のボールを投げ込めるはずです。
焦らず、じっくりと世界と戦うための準備を進めていってもらいたいと感じました。(本紙評論家)












