思わぬ波紋が、ドジャースのチームドクターにも及んだ。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は12日(日本時間同日)、MLB(メジャーリーグ機構)がドジャースのチームドクター、ニール・エルアトラッシュ医師(66)に聞き取りを行ったと報じた。発端は、総合格闘技団体UFCの元2階級王者コナー・マクレガー(37)を巡る薬物疑惑。ニューヨーク・タイムズ紙がマクレガーの回復過程に同医師が関わっていたと報じたことで、球界屈指の名医にも説明を求める動きが及んだ格好だ。

 同紙は10日(同11日)にマクレガーが2021年7月の試合で左脚下腿部の脛骨と腓骨を骨折した後、回復過程で禁止薬物にあたるパフォーマンス向上薬を使用していたと報道。エルアトラッシュ医師はマクレガーの骨折手術に関わり、その後、骨の治癒を専門とする医師を紹介したとされる。さらに同医師は、マクレガー側がUFCの薬物規定の一部から免除を求めた申請を支持する書簡を書いたことを認めた。

昨年ホワイトハウスを訪問したコナー・マクレガー(ロイター)
昨年ホワイトハウスを訪問したコナー・マクレガー(ロイター)

 一方で、ここは慎重な線引きが必要だ。エルアトラッシュ医師は同紙に対し、マクレガーが受診した専門医の評価や薬の処方には関与しておらず、自身もホルモン剤やステロイド剤を処方していないと説明。マクレガーに対しても、処方薬についてUFCの薬物検査担当者に確認するよう伝えたとしている。

 エルアトラッシュ医師は、野球界にとっても無関係ではない。ドジャースに加え、NFL(米プロフットボールリーグ)のロサンゼルス・ラムズでもチームドクターを務める。大谷の2018年エンゼルス所属時代のトミー・ジョン手術、24年のワールドシリーズで痛めた左肩関節唇損傷の修復手術を担当したほか、NFL(米プロフットボールリーグ)のニューイングランド・ペイトリオッツなどで活躍した元スターの故トム・ブレイディ氏、NBA(米プロバスケットボールリーグ)のロサンゼルス・レイカーズひと筋だったレジェンドのコービー・ブライアント氏ら名選手の手術を手がけたことでも知られる。

 ジ・アスレチックによると、MLB関係者はリーグ側が同医師のマクレガーの回復過程への関与をさらに把握したい考えだと説明。ただし、現時点で正式な調査ではなく、ニューヨーク・タイムズ紙もMLBが野球界における同医師の不正行為の申し立てを受けていないと報じている。ドジャースはコメントを控え、NFLもコメント要請に応じていない。

 エルアトラッシュ医師は声明で、アスリートの治療において全ての規則と規定を守ってきたと強調した。疑惑の主戦場は格闘技界でも、MLBが看過できないのは、ドジャースの根幹を支える名医の説明責任だ。名門球団にとって、思わぬ形で神経をとがらせる事態となっている。