DeNAの新人王候補・牧秀悟に心強い金言 かつて金城龍彦をブレークさせた田代コーチ指導の秘訣

2021年09月21日 14時00分

牧を指導する田代コーチ(右)
牧を指導する田代コーチ(右)

【赤坂英一 赤ペン!!】阪神・佐藤輝、広島・栗林と新人王を争うDeNA・牧にとっては実に心強い助言だった。9月に入って「上半身じゃなく下半身から連動して打った方がいい」と田代巡回打撃コーチが指摘。これが14日の17号本塁打につながったという。

「試合で打つことばかり考えていると、自分では気づけない部分がある。それを教えてもらったのがよかったと思います」

 そう語る牧が新人王を獲得すれば球団では2018年の東以来。野手としては、00年に史上初の新人王と首位打者の同時受賞を果たした金城(現巨人コーチ)以来、実に21年ぶりの快挙となる。

 実は、その金城をブレークさせた陰の功労者も田代コーチだった。1年目の1999年、金城は二軍監督にバットを短く持てと指導されて打撃不振に陥った。散々悩んだ揚げ句、当時二軍打撃コーチだった田代に相談。田代コーチ自ら二軍監督に掛け合って、金城本来のフォームに戻してくれたのである。

「元通りバットを長く持つと決めた以上、自分の打ち方を貫くんだぞ」

 そう言う田代コーチは、金城を姓でなく名前の龍彦から取って「たっつぁん」と呼んだ。ナイーブで神経質なところのある金城が、チーム内で呼び捨てにされるたびにオドオドしているように見えたからだ。

「たっつぁんなら絶対に打てるようになるよ。おれが保証するから」

 そんな田代コーチに、指導術の根拠と秘訣を聞いてみたことがある。

「最初に金城を見た時、持って生まれた素質でやっていくタイプだと思ったんだ。ああいう選手は、周りがとやかく言ったら死んじゃうよ」

 田代コーチはまだ20歳だった若手時代、2歳年上の新人・山下大輔の“面倒”も見ていた。多摩川に寮があったころ、夜の門限までに帰ってこない山下のため、常に1階の自分の部屋の窓を開けておいたのだ。

 山下はいつも土足で田代の部屋に入り、寮長の監視を逃れた。田代は毎朝目を覚ますと、山下の足跡を確認していたという。おかげで山下は一度も門限破りの罰金を取られずに済んだ。

 田代コーチによると、昔の寮には冷房がなく、夏は窓を開けていないと暑くて眠れない。時には窓からあおむけに上半身を出したり、駐車場にマットを敷いたりして寝たという。睡眠中に車が動きだして、危うくひかれそうになったこともあるとか。のちの牧や金城のためにも、田代コーチが無事で良かった。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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