阪神・藤川球児監督(46)の采配を巡り、今季もファンの間で議論となったのが、2番・中野拓夢内野手(30)への犠打指示だ。得点機会を確実に広げる堅実な戦術か? それとも好打者の打撃機会を犠牲にする非効率な作戦だったのか? 興味深いデータが浮かび上がっている。

 中野は今季も打率2割8分7厘、出塁率3割3分9厘と優秀な打撃成績をマーク。優れたコンタクト能力を誇り、安打や四球によって好機を拡大することも期待できる打者だ。後続には森下、佐藤、大山という強力な中軸陣。それでも今季はリーグ最多の27犠打を記録している。

 特に多かったのが「無死一塁」からの犠打指示だ。中野に打たせれば無死一、二塁、あるいは無死一、三塁と好機が拡大する可能性もある。それを自らアウトを1つ献上してまで走者を二塁へ進める必要があるのか? シーズンを通じて、藤川采配の是非がたびたび議論されてきた。

 野球データを発信する「NPB stuff+」がXで公開したのは、今季の中野のバント実施時と非実施時における得点状況の比較だ。

 最も注目すべきは、まさに論争の中心となった無死一塁のケース。中野がバントを試みた27打席では、攻撃終了までに21得点を記録し、1打席平均0・778点。一方、バントを試みなかった37打席では29得点を挙げ、同0・784点だった。

 さらに1点以上を奪った割合も、バントありの40・7%に対し、バントなしは40・5%。得点効率、得点確率ともにほぼ差がなかったという結果になった。

 つまり、無死一塁で中野に犠打を命じたからといって、その後の得点効率が明確に向上したわけではない。逆に、強攻策を選択したからといって大幅な利益が生まれたわけでもなかったのだ。

 近年のセイバーメトリクスでは、犠打によって走者を進めても、アウトを1つ献上することで攻撃終了までの得点期待値は低下するケースが多いとされる。特に無死一塁から一死二塁への犠打は、総得点の最大化という観点では必ずしも合理的とはいえない。

 ただし、犠打の是非は単純な数字だけで結論を出せるものでもない。イニングや点差、対戦投手の力量、後続打者の状態、さらには当日の選手のコンディションなど、さまざまな要素が介在する。大量得点を狙うべき序盤と、1点が勝敗を左右する終盤では、求められる戦術も異なる。

 今回のデータも各打席の条件を統一したものではなく、犠打の成功、失敗を含む実際の攻撃結果を比較したもの。バントを選択しなかった場合にどうなっていたかを直接証明するものではない。

 それでも、これだけの打撃能力を備えた2番打者に、3年連続でリーグ最多の犠打を記録させる必要はあったのか。とりわけ無死一塁からの送りバントは本当に最善手だったのか。藤川野球の戦術的な合理性を考える上で、興味深い検証材料といえそうだ。