大枚をはたいて痛い目を見ても、財布のひもは締めない――。今冬のメッツが狙う〝最後の一手〟として、現在ドジャーブルーのユニホームを身にまとう球界最高峰の左腕が浮上した。

 米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」の電子版「ON SI」は9日(日本時間10日)、今オフにFAとなるタリク・スクバル投手(29)とメッツを巡る動きをクローズアップ。2年連続でア・リーグのサイ・ヤング賞に輝いたスクバルは、今夏のトレード期限前にタイガースからドジャースへ移籍。8日(同9日)の本拠地レッズ戦では7回1/3を4安打2失点、5奪三振で9勝目を挙げ、3連覇を狙う王者を6連勝へ導いた。

 それでも契約は今季限り。ON SIはメッツが獲得候補として浮上していると伝え、今冬の球団編成を左右する存在になると分析した。なぜ、巨額補強を重ねながら苦戦したメッツが、また大枚を投じる必要があるのか。最大の理由は、先発陣の頂点に立つ絶対的エースが定まっていないことだ。

 デービッド・スターンズ編成本部長は今季、25歳の若手ノーラン・マクリーンにいきなりエースを託さず、フレディ・ペラルタを補強したものの、期待通りとはいかずトレード期限にレイズへ放出。現在はマクリーンがローテーションの軸を担っている。ON SIは、近年のメッツが中堅クラスの投手に市場相場以上の資金を投じながら十分な成果を得られなかった点を指摘。ならば同じ大金を使うにしても、今度こそトップクラスへ集中投資する方が理にかなうというわけだ。

 しかもスクバルはシーズン途中にタイガースからドジャースへ移籍したため、球団はクオリファイング・オファーを提示できない。獲得側にドラフト補償の負担が生じず、必要なのは契約条件とぜいたく税を含む「カネ」の勝負になる。潤沢な資金力を誇るスティーブ・コーエン・オーナー率いるメッツには、まさに得意な土俵だ。同サイトは契約年数を抑える代わりに年平均4500万ドル(約69億円)、5年総額2億2500万ドル(約344億円)規模を提示する可能性まで想定している。

 将来的に長期の保証契約が減るため、巨額投資を吸収しやすいという見立てもある。もちろん不安材料もある。スクバルは11月に30歳となり、今季は5月に左肘の遊離体除去手術を受けた。それでも6月に復帰し、現在はドジャースの先発陣を支える存在まで戻っているだけに、市場価値が大きくしぼむ気配はない。

 一方、ドジャースも簡単に手放すとは限らない。スクバルの代理人スコット・ボラス氏は、シーズン途中から新天地で過ごすことが将来を見極める材料になるとの趣旨を語っており、現所属球団が再契約交渉で優位に立つ可能性も指摘されている。

 3連覇の切り札として獲得した左腕を来季以降も抱えたい王者と、「今度こそ本物のエース」に巨費を投じたいメッツ。今夏の主役だったスクバルは、わずか数か月で再びストーブリーグのど真ん中に立つことになりそうだ。