奇跡の逆転Vへ――。〝遅れてきた伏兵〟が、沈みかけたチームに火をつけた。パ3位の日本ハムは19日の首位・ソフトバンク戦(エスコン)に延長10回、8―7でサヨナラ勝ち。最大6点差をひっくり返す劇勝で、首位とのゲーム差を7・5に縮めた。その大逆転の口火を切ったのが、今川優馬外野手(29)だった。

 0―6の5回に代打で登場すると、左翼席へ特大の今季2号3ラン。さらに3点を追う7回一死一、二塁では中前打で好機を広げ、直後に水野の逆転11号満塁弾が飛び出した。8回に同点とされたものの、延長10回に清宮幸がサヨナラ打。今川がつけた火が、最後まで消えることはなかった。

「今日の試合もそうですけど、諦めなければ必ず報われる時が来ると思ってずっとやってきたので。本当に今日勝ててよかったです」

 試合後、今川はかみしめるように語った。プロ6年目の今季は春季キャンプで外野の一角奪取を誓ったが、開幕一軍入りを逃し、今月中旬まで一度も昇格できずファーム暮らし。14日に新庄剛志監督(54)からようやく一軍昇格を告げられると、16日のオリックス戦(京セラ)で代打1号2ランを放った。8月は4試合で打率3割6分4厘、2本塁打、5打点。たまったうっ憤を晴らすような暴れっぷりに、新庄監督が目を細めるのも無理はない。

 だが、今川の価値は数字だけではない。「執念先輩」の愛称でファンやナインに慕われ、ベンチでは展開を問わず声を張り、仲間を鼓舞し続ける。二軍で長く姿を見てきた球団関係者も「ファームで結果を残しても、チーム事情でなかなか一軍に上がれなかった。でも腐らず前向きに取り組んでいた。そんな人が活躍すれば、みんな応援したくなる。二軍でも執念先輩が打つと自然とベンチの雰囲気が良くなっていた。一軍でも同じ状態になればチームは間違いなく乗っていける」と証言する。

 苦労を重ねても腐らず、声を出し続けた男が今度はバットで仲間を動かす。首位との7・5ゲーム差はなお小さくない。それでも奇跡の逆転Vを追う日本ハムにとって、遅咲きの苦労人が終盤戦の起爆剤となる可能性は十分にある。