3月に行われる第6回WBCに出場する大谷翔平投手(31=ドジャース)が26日、バンテリンドームで行われた侍ジャパンの全体練習でチームに合流。スーパースターが加わり、代表の空気は一気に引き締まった。刺激を受けて距離を詰める選手がいる一方でレジェンド級の存在感に圧倒され、恐れ多さから近づけない面々も少なくないという。超大物の加入が、侍ナインにどんな〝化学反応〟を生むのか。チームづくりは最終局面で、その「揺れ」も含めて注目を集めている。

 この日は午後にチャーター機で名古屋入りを果たしたばかりで、大谷がグラウンド上で行ったのはストレッチ、キャッチボールなどの軽めの調整のみ。フィールド上の滞在時間そのものが短かったこともあり、積極的にコミュニケーションをとれていたNPB選手は、古巣・日本ハム時代の同僚にもあたる近藤(ソフトバンク)だけだった。当の近藤は「僕は一緒にやってましたからね。何とも思いませんけど」と笑顔で振り返ったものの大半の選手たちはまだどこか遠慮気味で自然と動線を空け、遠目で背番号16を眺めるしかなかった。

バンテリンドームの外で大谷翔平の到着を待つファン
バンテリンドームの外で大谷翔平の到着を待つファン

 前回大会の2023年時点で既に「GOAT」と称され始めていた大谷は、今や唯一無二の「ユニコーン」へと進化を遂げた。ドジャースとの10年総額7億ドル(当時約1015億円)というメガディール、3年連続&4度目のシーズンMVP受賞、2年連続のワールドシリーズ制覇。大谷は名実ともに球界の中心に立ち、キャリアの最盛期を迎えようとしている。

 そんな巨大な恒星は「大谷重力」とも評すべき破壊的な引力を伴い、人を引き寄せる。だがその軌道に乗れぬ者は、強烈な遠心力で遠くへとはじき飛ばされてしまうことになる。

 映像などで見た大谷の打撃フォームを参考に打撃改造に取り組んだ佐藤(阪神)ら多くのNPBの打者たちは、希代のスラッガーのエッセンスを吸収することに早い段階から意欲満々だ。だが、3年前の第5回大会では大谷の打撃フォームに感化されたことが逆に足かせとなり、長期スランプに苦しんだ村上(ホワイトソックス)のような例もある。指導者経験も豊富な球界重鎮OBは「今大会でも、大谷から良い影響を受ける選手はたくさん生まれるだろう。だがそれと同時に理想と現実のギャップで〝副作用〟に苦しむ選手も現れるはず」と指摘する。

 とはいえWBCは親睦の場などではない。あくまでも国の誇りをかけて戦う球界最高峰のトーナメントだ。この日の会見で、侍ジャパン恒例の「決起集会」の開催について問われた大谷は「まずは勝つことが大事。おいしいご飯を食べにいくわけではないので、まずはそこに集中して頑張るべきかなと思っています」とニヤリ。ユーモアあふれる回答で会場を笑わせつつも、そこには今大会にかける強い決意と勝負師としての自負がこもっていた。

 さらに「前回大会同様にプレッシャーもかかると思いますが、まずは初戦からしっかり入れるようにしたい。前回優勝したからといって今回も簡単に勝てるわけではない」と表情を引き締めた。

 連覇の重圧を知る主役が合流し、侍ジャパンは勝負の温度を上げた。日本野球の最高傑作は前回大会でチームを世界一に導く立役者となったが、まだまだ誰よりも「勝利」と「トロフィー」に飢えている。