猛虎のV2は本当に揺るぎないのか――。沖縄・宜野座で春季キャンプを張る藤川球児監督(45)を本紙専属評論家の伊原春樹氏が直撃。同球団初となるセ・リーグ連覇、その先にある日本一奪回へ「内閣改造」を断行した真意、さらに黄金ルーキー・立石正広内野手(22=創価大)の育成方針について虎将の本音を聞いた。

【新鬼の手帳 伊原春樹】私がわざわざ言うまでもなく、今季のV大本命は阪神だろう。昨季は投打でライバルを圧倒し、9月7日に両リーグ歴代最速V。順調にいけば今季も虎の尻尾を捕まえられるチームが出てくるとは思えない。

 野球界では優勝した年にコーチ陣にメスを入れないことが慣例となっている。だが、藤川監督は元監督の和田豊氏(63)を一、二軍巡回コーディネーターから昨季不在だったヘッドコーチに起用し、ファームの江草仁貴コーチ(45)を一軍投手コーチに昇格させるなど「内閣改造」を行った。

 その狙いを聞くと「去年3月ぐらいから何が正解なのかということで悩み続けました。チームがうまく動くことが大事だと気づきました」と裏事情を話してくれた。和田ヘッドという〝潤滑油〟がチームに加わることで、より円滑にシーズンを進めていけるというわけだ。「去年はうまくいかない時もありましたけど、選手のおかげで勝てました」と話した表情からは、圧勝劇の裏にかなりの苦労があったことがうかがえた。

 常に理想の形を追い求める藤川監督の覚悟に、チームは昨季以上に強くなるなと感じた。そんな阪神への追い風が3球団が競合した大砲候補・立石を引き当てたこと。果たして〝金の卵〟をどう育てていくのか。

 潜在能力は抜群だ。藤川監督も「スタッフの誰に聞いても『運動能力がすごい』と」とのびしろを十分に感じている。ただ、1月の自主トレ中に右脚を肉離れしてしまったため「2月いっぱいはスローペースですね」と無理はさせず、育成プランも練り直したそうだ。

「本当はサードからスタートしてその後、レフトをと思っていたんですけど、故障してしまったのでやめました。WBCで佐藤輝が抜けている間にその代わりと考えていましたが、慣れないレフトをやらせるとケガが怖いので。サードでノックを受けながら足をつくって打撃が上がるのを待とうかなと。他にもメンバーはいるので立石は慌てずに大事に育てていきたい」。そう話した藤川監督から焦りのようなものは感じられず、期待の大きさも感じ取れた。

 昨年は圧倒的な強さでリーグ優勝を果たしたが、日本シリーズではソフトバンクに敗れた。指揮官に就任して1年目に味わった悔しさから得たものも大きかったようだ。藤川監督が「短期決戦のやり方というのが勉強になりました。打者は1本のヒットやホームランで一気に調子が上がることとか。これはやってみないと分からないことで勉強になりました」と話していたことが印象的で「絶対にやり返す」という思いが伝わって来た。

 藤川監督の貪欲に吸収しようとする姿勢が続く限り、阪神の勢いはそう簡単には止まりそうもない。

(本紙専属評論家)