阪神は交流戦明けから11連勝を含む13勝2敗の快進撃で、14日時点で2位・巨人に9・5ゲーム差をつけて首位を独走。2年ぶりの覇権奪回も現実味を帯びてきたが、藤川球児監督(44)はわずかな油断や緩みを決して見逃さない。鉄拳制裁やパワハラ、モラハラなどが許されない令和の球界でいかにチームを引き締めているのか――。

 チーム防御率1・95という驚異的な成績に象徴されるように、投手陣の質量は12球団トップクラス。攻撃面でも中野が打率3割4厘で首位打者争いトップに立ち、佐藤輝は24本塁打&62打点で2冠獲得を射程に入れている。さらに近本は23盗塁で4年連続の盗塁王へ視界良好で、虎戦士たちが各部門で優秀な成績をマークしている。

 まさに〝球団史上最強〟とも呼べる左ウチワの陣容だが、チームを預かる藤川監督からは常にピリピリとした緊張感が漂う。12日のヤクルト戦(甲子園)では、その厳しさが際立つ一幕もあった。

12日のヤクルト戦で無謀走塁した豊田は懲罰交代→二軍降格になった
12日のヤクルト戦で無謀走塁した豊田は懲罰交代→二軍降格になった

 3―2と勝ち越しに成功した直後の4回の攻撃。一死二、三塁で打席に入ったプロ4年目の豊田は、前進守備を敷いた遊撃正面へのゴロを放ったが、三本間でランダウンプレーが発生した間に一塁を蹴って二塁に突入した。あまりにも無謀な走塁判断で変則的な併殺となると、直後の5回の守備から容赦なくベンチへ下げられた。

 藤川監督は一連の交代劇を「チーム全体へのメッセージ」と説明し、事実上の懲罰交代だったことを示唆した。翌13日には豊田を二軍降格。新体制下で一軍定着のチャンスをつかみかけていた28歳にとっては、悔やんでも悔やみきれないプレーとなってしまった。

 豊田の一件に限らず、藤川監督は指揮官就任以降、ミスを犯した選手を即二軍に降格させる措置を連発。一、二軍当落線上の選手たちは今季、何度もエレベーターのようにファームと本隊を上下する日々を強いられている。

 一昔前までは、ボーンヘッドを犯した選手が指導者たちから鉄拳で制裁されることなど日常茶飯事だった。1980年生まれの指揮官も少年時代は「ケツバットなんかは当たり前にあった」と明かす。

 だが、現代は「選手を叱ることもできない時代。ファームに行ってもらうなど、環境を変えて学ばせる時代ですよね」と藤川監督は語る。シビアな勝負の世界に不可欠な厳しさも、ひとつ間違えれば周囲から「ハラスメント」と捉えられかねず、自身のタクトや昇降格の決断こそが、選手たちへのメッセージになると考えているという。

「自分たちがされてきて嫌だったこと」を「次の世代にもそのまま味わわせる」ことは愚策でしかない。時代に寄り添いながら、わずかな油断やスタンドプレーの芽を注意深く摘み取り続ける。