【越中詩郎GET BACK~反骨のサムライ血風録~(9)】1979年に全日本プロレスでデビューし、若手時代にジャイアント馬場さんの付け人を務めたときの話はまだまだあるんだ。食事をしてホテルのラウンジにいたら、あいさつに来た方がいた。サザンオールスターズの桑田佳祐さんだよ。
馬場さんも立って「どうも」ってやればいいのに、座って葉巻をくわえたまま。しかも帰った後「誰だっけ?」ってね。「有名なミュージシャンですよ」と言うと「ゴダイゴ(※)か?」。よくゴダイゴを知っていたなって思うけど「サザンの桑田佳祐さんです」って教えたら「ほお、そうか」って。馬場さんが愛用した東京ヒルトンホテル(現ザ・キャピトルホテル東急)では高倉健さんがあいさつに来たことがあった。健さんに対しても、馬場さんは立ち上がらなかったからね。
あと記憶に残っているのは北海道巡業の話かな。とにかく移動距離が長い。札幌から釧路まで、バスで約10時間かかる。半分くらいの「旭川まで行こう」となって「そういえば何も食べてないな」っていう話になった。俺が「どこも店は開いてないですよ」と言ったのに馬場さんは「腹が減った」ってカリカリカリカリしている。
そうしたら、奇跡的に1軒だけマクドナルドがあったんだ。でも「マックなんか食わない」ってね。俺も腹が減っていたから、運転手をしていた(リングアナウンサーの)原軍治さんに「ハンバーガーでも食べましょう」って。ビッグマックやフィレオフィッシュを買って車に戻ると、馬場さんに「だまされたと思って食ってくださいよ」。もう、食わせるのも大変だったんだよ。
どうなったと思う? フィレオフィッシュを口にした馬場さんは「おい、世の中にこんなにうまいものはない!」って言い出してさ…。こっちは口があんぐりだよ。ひと口食って「ペッ!」ってやるのかと思ったら、まさかの反応だったからね。ただ、困ったのはその後だよ。それから1週間、毎日「フィレオフィッシュ買ってこい!」だからね。1日に10個くらいは食べてたよ…。
あと馬場さんは葉巻とかたばこが好きでね。ショートホープだったら2回吸ったらもうなくなっちゃう。「ああ、もうねえや」って。とにかく肺活量がすごかった。シリーズ中は葉巻もケースで持ってきてたからね。
だけどシリーズの途中で、グレート小鹿さんからトイレに呼ばれるんだよ。何かと思ったら「馬場さんの葉巻、2~3本持ってこい」って…。小鹿さんはナイトクラブで馬場さんの葉巻を吸っていたからね。自分で言えって! こうして俺は付け人をしながら、リングでも結果を残せるようになったんだけど…。













